時代の変化から、CIOとしての役割を知る進化するCIO像(2)(2/3 ページ)

» 2008年09月18日 12時00分 公開
[碓井誠(フューチャーアーキテクト),@IT]

社会の流れを読めば、“本当に必要なもの”が分かる

 例えばサービス産業では、社会の変化を受けて、顧客満足度を高める施策に大きなウェイトが置かれるようになった。そして、対人型のサービスの場合、「顧客満足を生み出すのは、顧客接点にいる従業員であり、サービスの質は従業員の満足度に依存する」といわれているように、「従業員の満足度」もビジネスの大きな課題となりつつある。

 これはすなわち、社会の変化に即して顧客満足度を高めるべく、顧客との交流チャネルや業務プロセスを変化させるためには、人・物・金、情報の適正配分や、制度やルールの革新など、リソース配分の見直しも併せて行う必要があることを示している。

 従ってこれらを支援する情報システムのデザインも、顧客サービスそのものの業務プロセスの見直しやシステム化だけでは済まない。従業員の満足度を高め作業負荷を軽減するための情報共有や、バックオフィス系の支援システムなどを含めた総合的な視点が必要となってくる。

 ちなみに、「従業員の活動支援のみならず満足度が、サービスの生産性や品質の向上を生み出す」との考え方は、いまでは至極当然のものとなっているが、以上のように時代の流れを折り込んだアプローチであり、「サービス・プロフィット・チェーン」と呼ばれている。

活用できるものは進んで取れ入れる

 では次に、「時代の流れをつかむ」ための、もう1つのアプローチを紹介しよう。それは「売れ筋は外にある」という考え方を持つことである。

  これは、小売業の原則であり、常に顧客のニーズや、他店・競合店のよさを見極め、売れ筋商品・新商品を自社に取り込み、仮説・検証と、顧客への提案を繰り返す、ということである。これは小売業に限らず、あらゆる業種、職種に適用することができる。

 例えば情報システム部の仕事もその1つである。情報システム部は幸いにも外部のパートナー企業と連携して仕事を進めることが多く、社外のメンバーから学ぶ機会も多い。さらに、業界ごとのカンファレンスや技術・システムの展示会、ソリューションセミナーのほか、書籍や事例、ネット情報も豊富にあり、“売れ筋”を探す好環境の中にある。

 これを生かして、自社のシステムや業務プロセスにこだわることなく、外の技術やソリューション、他社の成功事例やビジネスモデルを大いに取り入れるべきである。特にCIOは、企業の硬直化を防ぐためにも、外部とのつながりを生かして外に視線を向け、こうした役割を進んで担うことが重要である。

 しかし多くの企業では、「情報収集」といっても製品の市場調査や業界情報の入手程度で、他社の事例など外の変化を組織的に取り込む仕組みを持ち合わせてはいない。だがIT活用はそのデザインやアイデア次第で大きな差が生まれることを考えると、そのリスクは大きい。

 例えば製品や既存サービスの調達は、どれほど入念に選択したところで、コストパフォーマンスに5割も10割も差が生じることはほとんどない。しかし、システム投資は違う。アイデア次第で、そのコストパフォーマンスには大きな企業間格差が生まれる。場合によっては、逆に停滞や失敗を招くこともある。従って、常によいアイデアを生み出せる状況を作るうえで、外部によきパートナーを持つこと、そして相手にとってよきパートナーとなるべく自己革新を図ることも成功の条件となる。

 外のよさをウォッチし、進んで取り込むことは、自社システムとの比較・検証を行うことでもある。ITが業務のイノベーションを支える大きな柱となっている現在、「売れ筋は外」の考え方は、ITガバナンスの重要な柱でもある。

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