あどみちゃんのITマネジメント超常識特別企画 超常識シリーズ(3)(2/6 ページ)

» 2008年09月26日 12時00分 公開
[構成:@IT情報マネジメント編集部, イラスト:カトウナオコ,@IT]

超常識その1 - 経営戦略とIT計画

ITマネジメントのはじめの1歩

 「マネジメント」の定義はいろいろありますが、ごく簡単なものとしては「計画と統制」があります。かの有名なマネジメントサイクルのPDCAは「計画・実行・確認・是正」です。どちらも“計画=プランニング”が含まれていることから分かるように、ITマネジメントも第1歩は、IT計画/IT企画です。

 その中心にあるのは「経営戦略」「事業戦略」です。これら戦略には「合併・買収」「業態の変更」のような大規模な打ち手から、「販路拡張による売り上げ増大」「在庫圧縮によるコスト削減」「適切な顧客対応による顧客満足の向上」「業務を見える化して改善を推進する」といった策までさまざまですが、いずれにしてもITはこれらを実現あるいは支援するものでなければなりません。

 実現すべき事業目標/事業施策が定まったら、それを解決するIT戦略を構想していきます。このとき、最初から特定の技術ありきで考えてはなりません。コンピュータのハードウェアやソフトウェアにどんな機能が必要かを議論する前に、事業目標とその実現に求められる業務機能や業務プロセス、情報内容を検討することが大切です。

 例えば、「情報共有のためにグループウェアを導入する」という結論に飛び付く前に、何を目的にどんな情報を共有すべきなのかを明確にすることが重要なのです。それらを踏まえて、システムアーキテクチャや個別テクノロジの選定に進むべきです。

 1つの企業が取り得る事業戦略は、実にさまざまです。そのうちの1つの事業戦略に狙いを定めたとしても、それを実現・支援するIT戦略もまた1つとは限りません。その中で有望な事業戦略=IT戦略は企画として具体化し、それぞれを費用対効果や実現可能性の面から比較・検討することになります。

 戦略選択で最もポピュラーな方法にSWOT分析3C分析があります。業務プロセスの分析ならバリューチェーンSCORAPQCビジネスプロセスモデルなどが参照できます。IT投資に関するフレームワークとしてはVal ITがあります。

ITマネジメントの制約条件

 どんなに優れたアイデアに基づくIT企画であっても、実行上の制約事項を考慮に入れなければ“絵に描いたモチ”です。

 ITに関する第1の制約は予算──裏返せばコストです。昔からIT(コンピュータシステム)は「金食い虫」と呼ばれてきましたが、ITの存在感がかつてないほど大きくなった今日、定量的なITコストマネジメントが求められます。一般に、IT-ROI算出では「業務アプリケーション」と「ITインフラ」は分けて考えるべきだとされます。ITインフラは電話やコピー機のように、直接的なROI算定がしにくいからです。IT投資/コストの評価法としてはBSCを拡張したものをはじめ、多くの手法が提案されています。

 第2の制約条件はIT資源です。仮に無尽蔵のIT予算があったとしても、必ず適切なIT資源が調達できるとは限りません。いわんや限られた予算でやりくりをしなければならないのです。

 COBITではIT資源として「要員」「情報」「インフラストラクチャ」「アプリケーション」を挙げています。この中で最も厳しい制約となるのが「要員」=人的資源でしょう。優れた人材と巡り合うのは(ITに限りませんが)、簡単なことではありません。それに比べれば「インフラストラクチャ」と「アプリケーション」=技術資源は予算次第といえますが、だからといって既存システムを廃棄して、全面的に新システムに切り替えるという方法は予算・人・技術それぞれの面から制約があります。人的資源・技術資源については次ページ以降で取り上げます。

 「情報」=データ資産も重要な資源です。「顧客情報」「販売情報」「会計情報」といった情報の質と量が不十分だと、どれほど優れたIT戦略でも十分な効果は得られないでしょう。また、人や技術と違って外部調達ができなかかったり、逆に外部調達する以外に方法がないといった特性もあります。

 IT企画を検討するうえでもう1つ考慮すべきなのは、リスクです。ITシステムにまつわるリスクは多岐にわたります。不正アクセスや情報漏えいなどのセキュリティリスクをはじめ、ハードウェア故障や天災・人災によるシステム停止、バグやロジックミスによるソフトウェア誤動作、プロジェクトの失敗、IT人材の退職、導入技術のサポート中止など、挙げれば切りがありません。しかし、ITリスクマネジメントはITマネジメントの重要な部分です。リスク対策の優先順位付けと、事業継続計画(BCP)の整備などを進めましょう。

ITガバナンスも視野に

 ITマネジメントに関連するものとして、ITガバナンスがあります。ITガバナンスは、コーポレートガバナンスの定義に揺れがあることを反映していくつかの解釈がありますが広義に「IT活用のための組織的な能力」と考えると、IT利用に関する各種の方針や手順、標準などを定め、それらを全社的に順守させる仕組みを作る必要があります。特に中央集権的なマネジメントや統制が行えないのであれば、それに代わるガバナンス体制は必須です。

 また、ITを企業の競争戦略上の武器にするということであれば、IT部門の人材だけではなく、社員全体のITリテラシーを高めるとともに、組織全体のITケーパビリティを成熟させていくことが必要です。組織のIT活用力を図るフレームワークに、組織IQがあります。

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