あどみちゃんのITマネジメント超常識特別企画 超常識シリーズ(3)(4/6 ページ)

» 2008年09月26日 12時00分 公開
[構成:@IT情報マネジメント編集部, イラスト:カトウナオコ,@IT]

超常識その3 - IT技術戦略を考える

全体で考える、将来を見据える

 ITマネジメントでは、「自社はどのような技術を採用し、使い続けるか?」を考えることも大切です。全社的なITマネジメントやITガバナンスの仕組みがなく、システム導入を個人や部門に任せておくと、個々のシステムがばらばらになり、システム連携やセキュリティの面で問題が生じる可能性があります。また技術者や利用者に対する教育コストも考慮すべきでしょう。

 ポイントの1つは、導入した技術や製品の将来性です。目先の安さにつられてイニシャルコストの安い製品を導入したところ、後で追加費用が必要になり、トータルでは高くついたというのはよく聞く話です。

 “安さ”という点で一時注目を集めたのが「オープンソース・ソフトウェア(OSS)」の活用です。OSSは通常、ライセンスコストが掛からないため、システムを安く構築できると喧(けん)伝されましたが、世の中にそのソフトを保守できる技術者が少ない場合には保守・運用段階でかえって高くつくということもありました。もっともこの点はベンダ製品でも同じです。普及度が低い製品・技術は、特定の事業者に依存せざるを得なくなる可能性が高いので、競争原理が働かずにサポート金額が高止まりする傾向があります。

 また、あまりに利用者が少ない技術はその開発者・事業者が開発やサポートを中止するかもしれないというリスクを負うことになります。自社のビジネスを支えているIT要素技術や製品の将来的なロードマップ、あるいはIT関連の標準規約・規格などの動向をウォッチすることもITマネジメントの一端といえるでしょう。

リスクを取るか、安全策か

 自社のIT適応力を高めることで最新技術を取り入れ、競争力や先行者利益を狙うというのもIT戦略の1つです。最新技術を他社に先駆けて採用する者を、普及理論では「イノベーター」「アーリーアダプター」と呼びます。

 一般に最新技術は「思ったような成果が出ない」「使いこなしノウハウが確立されておらず、試行錯誤しなければならない」「技術者育成や利用者教育が必要」「その技術は結果的に普及しないかもしれない」など、さまざまなリスクを負います。

 他方、2003年に「IT Doesn't Matter=ITは重要ではない」という論文が発表され、IT業界の内外で議論となりました。これはITによるイノベーションを否定的に述べたもので、乱暴にまとめてしまえば「評価の定まったIT技術は安く手に入るので、それを使えばよい」という主張です。

 つまるところ、どのような技術を採用するかは自社のコアコンピタンスは何か、事業戦略として何を強化すべきかという点に依存します。ITを“競争力強化の武器”と位置付けるか、“最低限の底上げツール”と位置付けるかは、まさに経営戦略の問題です。

 とはいえ最低限のITも変化します。10年前には電子メールのアドレスを名刺に印刷していない会社はまだありましたが、いまではほとんど見かけません。

 その意味で注目なのがSaaSです。初期コストが不要で「使った分払い」なので“最低限派”にも利用しやすいソリューションです。カスタマイズやシステム連携ができるサービスも登場しており、新しいITパラダイムとして、“最新技術派”も熱い眼差しを注いでいます。

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