あどみちゃんのITマネジメント超常識特別企画 超常識シリーズ(3)(5/6 ページ)

» 2008年09月26日 12時00分 公開
[構成:@IT情報マネジメント編集部, イラスト:カトウナオコ,@IT]

超常識その4 - ベンダマネジメント

ITベンダの選び方

 人的・技術的資源を自社で保持し、すべてのITシステムを内製するのであれば別ですが、通常はこれらIT資源の多くを外部調達することになります。IT資源の調達先をここでは“ITベンダ”と呼びましょう。

 ITベンダは、知恵を提供してくれる「ITコンサルタント」、知恵を含めた作業を請け負ってくれる「システムインテグレータ(SIer)」、知恵やノウハウをソフトウェア製品の形で提供してくれる「ソフトハウス」、サーバやパソコン、ネットワーク機器を提供する「ハードウェアベンダ」、ITシステムの物理的な置き場を提供する「ホスティング事業者」、ネットワークサービスを提供する「通信事業者」など、さまざまです。

 これらの製品・サービスを組み合わせて“システム”を作るわけですが、自社が求めるIT機能を実現できる組み合わせを的確に把握するのは骨の折れる仕事です。大まかな技術戦略が策定されていたとしても、具体的なIT製品・サービスを導入するに当たっては動作検証は欠かせません。

 自社でこうした作業を行えない場合は、SIerに頼ることになるでしょう。SIerは、個別の要素技術を統合(インテグレーション)してシステムを作り上げてくれる事業者です。きちんとしたSIerなら、自社の要件を適切に伝えることで、それに見合ったシステムを構築してくれるでしょう。ただし、万能のSIerはいません。事業者によって「ERP導入に強い」「Webアプリケーションが得意」というように、長所が異なるので、自社のIT戦略に合ったところを選ぶことが大切です。

 ITベンダの選定で有効なのが、「RFP」や「ITコーディネータ」です。RFPはITシステムなどの調達に際して、ITベンダに具体的なシステム提案を行うよう要求する仕様書です。自社のシステム要求を確認するうえでも有用ですし、このとき選定基準を作ることで、コンペ形式でITベンダを選ぶ際にも助けにもなります。

 ITコーディネータは、ITシステム作りの上流から下流までをサポートする資格保持者です。RFP作成からITベンダや技術の選定、プロジェクト料金の値引きまで幅広く対応してくれる存在です。システム部門やIT人材を持たない企業にとっては、かなり心強い味方になってくれるでしょう。

クオリティチェックやサービスレベル管理とは?

 ベンダマネジメントを行ううえで重要となるのが、「クオリティチェック」や「サービスレベル管理」です。クオリティチェックは作られたソフトウェアやシステムの完成品について品質をチェックすることです。サービスレベル管理は、主に通信ネットワークやデータセンター、ホスティングなどの汎用的サービスを利用する際の品質を管理することを指します。ネットワーク業者と契約時に結ぶ品質保証契約である「SLA」などがよい例です。

 例えば通信ネットワークならば、あらかじめ「遅延時間=60ms以下」「障害回復時間=30分以内」「可用性=99.999%」などの保証数値を決めておき、ネットワークベンダのサービスがこの数値を下回った場合には、違約金などを支払うといった契約です。ただし、これは一例でベンダによって保証する内容などには大きな違いがあります。

 一般に保証数値が高ければ高いほど、保証金額は高くなります。「99%だと1万円、100%だと100万円」などといった具合です。このような契約条項になっていた場合、1%の確率での発生する障害による損失金額を計算し、その金額が10万円だったら割の合わない契約だと判断することになります。

 クオリティチェックは、ベンダから納入されたシステムやプログラムをチェックすることです。通常、納品前にベンダ側でテストは行っていますが、本番環境では不具合が発生する場合があります。納入段階でのクオリティチェックがきちんとできないと、システム稼働後に大きな問題が発生することも考えられるため、極めて重要です。

 納入段階のチェックはバグの有無も対象になりますが、要求した通りにシステムが作られているのかをテストすることがポイントになります。

契約内容を確認しよう

 IT製品・サービスの調達には大きく分けて、(1)買う、作ってもらう、(2)自ら作る、(3)借りる、の3つがあります。(1)の場合は手に入るのは完成品、(2)の場合はプログラマなどは外部人材を使ったとしても作る過程に関与することになります。実際にはパッケージを買ってきてカスタマイズを行うなど、中間の形もありますが、何に投資するのかを明確に認識しておくことが大切です。SIerなどに開発をしてもらう場合も、業務委託契約と請負契約では権利義務が変わってきます。これも忘れずにチェックしておきましょう。

 契約上のトラブルで多いのが「思った通りのものができなかった」というケースです。要求と違うのだから直してくれるだろうと思っていても、契約書に「納品後の改修は別料金」と書いてあれば、追加予算を払うか、我慢してそのまま使うかしなければなりません。仕様変更の扱い、出来上がったソフトウェアの著作権や知的財産権、何をもって納品とするかなどは事前によく確認しておきましょう。

 2009年4月から、ソフトウェア受託事業者にも原則として工事進行基準が適用されることになり、ITベンダ側が厳密な契約を求めてくる可能性があります。契約には一層の注意が必要です。

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