仮想化が本格普及するのは2〜3年後から仮想化インタビュー(1)(1/2 ページ)

世界不況や原油高などの影響で、運用コストの削減を目的としたグリーンITが注目を集めている。グリーンITを実現するうえで重要な役割を占めるのが“仮想化技術”だ。今回は仮想化技術の現状や今後について、ガートナージャパンの亦賀氏に話を聞いた。

» 2008年11月25日 12時00分 公開
[大津 心(@IT情報マネジメント編集部),@IT]

 2008年の日本のIT業界で注目されたキーワードに「グリーンIT」や「クラウドコンピューティング」が挙げられると思うが、グリーンITをサポートする技術として“仮想化技術”の進歩に注目が集まった年でもあった。その中でも、仮想化ソリューションでかなりのシェアを占める「VMware」に対して、その競合製品としてマイクロソフトの「Hyper-V」や、オラクルの「Oracle VM」が無料で提供されるようになったインパクトは特に大きい。

 このように、今後数年間で激変することが予想される仮想化市場の現状と今後の予測を、ガートナージャパンでリサーチITインフラストラクチャ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏に話を聞いた。

一般ユーザーは、まだまだ様子見の状態

 まず亦賀氏は、仮想化の導入を検討しているユーザーの最大の関心事は「仮想化を導入して、本当にコストの削減ができるのか?」という点だと指摘。そして、ユーザーのこの問題に対する取り組み方が「自らその疑問を払拭するために積極的に取り組むユーザー」と「慎重なユーザー」の2つに分かれるとし、「当然、現状では後者の方が大多数を占めている」と分析した。

ALT ガートナージャパン リサーチITインフラストラクチャ バイスプレジデント兼最上級アナリスト 亦賀忠明氏

 ただし、この「仮想化でコスト削減できるのか?」という問題に対してユーザーはもちろんのこと、ベンダやSIerなども含めた業界全体に整理されたロジックが存在しておらずに混乱しており、明確な答えが出ていないのが現状だと亦賀氏は説明する。この結果、「昨今、仮想化が注目されていることもあり、仮想化の認知度は高く、関心は高いものの、普及度は低いというのが実態だ。つまり、仮想化は知っているものの“様子見”なユーザーが多い」(同氏)と現状を説明した。

 例えば仮想化でコスト削減を目指す場合、「何のコストが削減できるのか?」という点が重要だ。

 仮想化技術を用いて、複数台のサーバを1台に集約するとしても、新しいサーバ1台とVMwareなどのソフトウェアライセンスコストが初期費用として発生する。従って、その初期費用を比較的短期間で回収できるくらい、運用コストが削減できなければROI(Return On Investment)が悪くなってしまう。亦賀氏は「多くのユーザーが仮想化のビジネスメリットを見極めたいと考えている。この問題解決のためは、VMwareのような仮想化ベンダが、価格およびその意味について、これまで以上にユーザーに対して積極的に説明していくことが重要である」と指摘する。

 そもそも、仮想化導入の目的の1つを、ユーザーはコスト削減であると考えている。ここでいう、コスト削減の対象は、ソフトウェアのライセンスコストやハードウェアの初期投資だけではない。長期的な固定費となる運用コストの削減こそ視野に入れるべきなのだ。そして、運用コスト削減に効果的なのが「運用の自動化」だ。

仮想化が普及するにはまだ2?3年はかかる

 運用の自動化とは、現状人間が行っている運用管理をソフトウェアで自動化するというもの。ただし、ソフトウェアで自動的に行うためには、サーバの操作方法やソフトウェアの仕様などが全社的に標準化されている必要がある。

 このように考えると、一般的なユーザー企業の場合、「まず自社内のインフラを標準化し、その後に運用の自動化ツールなどを導入することで、初めて運用コストの削減や仮想化のコストメリットが出てくる」というストーリー展開になってしまい、非常にハードルが高い。このことから、亦賀氏は「仮想化が本格的な普及段階に入るまでには、まだ2?3年かかるだろう」と予測した。

 つまり、多くのユーザー企業は第1段階で「ITインフラや運用手順の標準化」を行う。そして第2段階で「標準に従った運用自動化ツールを導入」することで、第3段階でようやく「運用コストの自動化」が実現でき、運用コストの削減ができるという流れだ。「このように考えると、もはや仮想化だけの話ではなく、“インフラ全体をどうするか”の話になってきている」と同氏は指摘する。

 これをガートナーでは「インフラストラクチャの成熟度」と呼ぶという。企業の成熟度に応じて課題を設定し、成熟度を上げていくことでインフラ全体のレベルを底上げしていく仕組みだ。同社では、成熟度を上げるためのフレームワークやメソドロジを提供してユーザー企業をサポートしているとした

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