米国サブプライムローン問題を震源とする今回の世界的な金融危機は、100年に一度の人的災害だと指摘する専門家もいます。
もともと、長期衰退の傾向が強い日本では、サブプライムローン問題が実体経済に与える影響はさほど大きくありません。とはいいつつも、2007年末あたりからじわじわとオフショア開発への逆風が吹き始めており、オフショア開発フォーラムでは、「東京で働くオンサイトの中国人IT技術者がダブついてきた」と報告されています。
例えば、好調だった大連の日本向けアウトソーシング(オフショア開発+BPO)にも陰りが見え始めています。
2006年ごろから、急成長している大連のゆがみを指摘する声が一部の専門家の間ではささやかれていましたが、ここにきて明確な後退局面に差しかかってきました。
大連で日本向けオフショア開発ベンダを経営する李青寧氏(大連亜舟信息産業・総経理)は、業界専門誌グローバルソーシング・レビューのインタビューに応じて、大連の厳しい経営環境について次のように語ってくれました。
・2008年4月以降
独自の商流を持たず派遣・孫請けに甘んじてきたソフトハウスは、ここ半年間はほとんど仕事がない状態
・2008年6月
中国国際ソフトウェア交易会(大連)では、例年に比べて出展者、来場者共に少なく、閑古鳥が鳴く状態だった
・2008年夏
社員の半数以上を、100人規模で人員整理する会社もあり
・2008年秋
人材市場で職を求める高級人材が増える一方、求人は激減
大連ベンダの勝ち負けを分ける要因 |
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負け要因 | 自前の営業部隊を持たず、安定した大手IT企業への派遣や孫請けに頼り切っていた。こうした派遣・孫請け企業は、右肩上がりの時代には、真面目に独自の商流を模索する上流指向のベンダよりもはるかに高収益を誇っていた |
勝つ要因 | 厳しい大連で生き残るには、会社規模は無関係。大規模でも、孫請け主体なら簡単に仕事を干されてしまう。経営者が「ソフトウェア開発にコミットする」が最も大切な条件である。「もうかるからIT、楽だから派遣、次は不動産」と浮気性な経営陣が運営する会社は見事に淘汰(とうた)されつつある |
参考記事
東京では本当に中国人IT技術者が余っているか?(アイコーチ)
オフショア開発関係者は、誰もが米国発の金融危機に端を発する景気後退が、オフショア開発に与える影響を懸念しています。
オフショア開発フォーラムの調べによると、中国オフショア開発ではやみくもな拡大路線に終止符が打たれ、人材マネジメントの重点課題が「即戦力人材の中途採用」から「新卒採用」ならびに「人材育成」に移っていることを示唆します。
前出の大連における、対日オフショアリング業界の2008年度上半期の惨憺(さんたん)たる状況や、オフショア開発フォーラムの調査結果を分析すると、短期的な日本のオフショア市場動向を次のように結論付けます。
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