デスマーチを回避するのに大事な“3つのこと”：プロジェクトマネジメントインタビュー（2）（2/2 ページ）

[大津心，＠IT情報マネジメント編集部]

リスク管理で重要なのは“リスクの重み付け”

　2点目のポイントである「リスクを事前に把握する」において、重要な点は「リスクの重み付け」だという。リスクの重み付けとは、プロジェクトの仕様変更などターニングポイントに直面したときに、その仕様変更がどれだけコストインパクトがあるのかを判断し、リスクとしての重要度を判断することを指す。

　篠氏は、「プロジェクトには、さまざまなリスクが潜んでいる。そのリスクは、放っておいても問題にならず、うまくいくケースもあるが、ほとんどの場合は放っておくと悪い方向にいくものだ。どんなリスクでも、多少のコストインパクトはあるはずなので、プロジェクトマネージャはそのコストインパクトを分析・判断し、リスクとしての重み付けをしなければならない」と説明した。

　そして、そのリスクの重要度に応じて、モニタリングや品質チェックの頻度などを変えていくことが重要だという。「何でもかんでも、同じように管理するのではなく、リスクの重要度に応じて優先順位をつけてリスク管理することがとても重要だ」（篠氏）とした。

コミュニケーションの肝は勇気を持って“なあなあ”をやめること

　そして最後のポイントである「コミュニケーション管理」では、2つの肝があるという。1つ目のポイントは、社内従業員向けのコミュニケーション管理で、もう1点はユーザー向けのコミュニケーション管理だ。

　まず、社内従業員向けコミュニケーション管理では、「モチベーションの維持」が非常に重要だという。「厳しいプロジェクトが多い中、いかに楽しく仕事してもらうかはマネージャの最大の仕事だ」（篠氏）。

　モチベーション維持で重要なのは、きちんとプロジェクトチーム内のヒエラルキーを作って、トップの意向をサブリーダーやチーム要員に行き渡らせることだという。また、同氏によると「よく小学校などで『褒めて伸びる子』や『叱ると伸びる子』などと表現されたりするが、大人でも同じだ。こまめなコミュニケーションをとることで、十人十色であるプロジェクト要員の性格などを把握し、それぞれに合った対応方法をとるべきだ」と説明した。

　他方のユーザー企業とのコミュニケーションにおいては、「ユーザー企業のキーマンとのコミュニケーション」が非常に重要だという。前述のように、ユーザー企業とのコミュニケーションにおいては、仕様凍結後に仕様変更が発生して手戻りになるケースが多い。この問題の原因について篠氏は、「コミュニケーション不足が原因」と分析する。

　まず、要件定義の段階から、頻繁に仕様変更会議を実施。仕様凍結時に、ユーザーの合意をしっかりと得ることが非常に重要だという。そして、そのコミュニケーションをきちんと行っておくことで、その後の仕様変更については、開発者側の設計が問題で発生したのか、それとも業務要件の変更なのかをはっきりさせることができるというのだ。

　篠氏は、「日本の習慣でなかなか難しい問題ではあるが、なあなあでやっていてはダメだ」と指摘。そして、最初の段階で仕様をきちんと決めるためのポイントは、ユーザー企業側のトップに対して、「『ユーザー企業側で、システム化の要件・仕様を提示する要員』に必要なスキルセットを提示すること」だという。ここで重要なのは、開発企業側がスキルセットを提示し、さらにそれに合わない人材が選出された場合には、勇気を持って「変えてください」ということだと篠氏は強調した。

重要なのはPMBOKに肉付けすること

　そして、最後に篠氏が説明するのがPMBOKの重要性だ。

　同氏は、「PMBOKはこれだけ話題になっただけあり、かなり有効なものだ。日本でも取り入れている企業がかなり出てきている。しかし、机上の学習だけではPDCAのPlanとCheckの部分しか理解できておらず、不十分だ。現在、PMBOKがうまく導入できていない企業の多くがその部分で誤解している」と説明した。

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　そして、PMBOKをきちんと組織に生かすためには、学習だけでは身に付かないDoとActが必要となる。そのDoとActを補うのがノウハウであり、PMBOK導入でうまくいっていない企業はこの部分のノウハウを吸収する必要があると篠氏は主張した。

　なお、＠IT情報マネジメントでは、2009年6月30日にベルサール神保町において、「＠IT情報マネジメント カンファレンス リスク・コストと戦うプロジェクト管理セミナー」を開催する。同セミナーでは、篠氏をお呼びして、今回解説したプロジェクトマネジメントのポイントをさらに掘り下げ、実例を交えて解説する。

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