グリーンIT事例:グリーンITへの取り組みは企業の義務で使命だ事例紹介 NTTコムウェア(2/2 ページ)

» 2009年06月30日 12時00分 公開
[大津心,@IT]
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グリーンITの観点におけるデータセンター利用

 Green of ITの観点で考えると、前述のように「より効率的なサーバへの乗り換え」や「仮想化技術の採用」などが一般的だ。しかし、一部の大企業を除き、自社内だけの取り組みでは限界がある。そこで秦氏が推奨するのが、データセンターの利用や環境に配慮したデータセンターへの乗り換えだ。

 通常、サーバを稼働する際に、サーバの電力消費量と、サーバを冷やすために使われる空調設備の電力消費量は、同程度だといわれている。つまり、サーバ自体の電力消費量だけでなく、空調設備の効率化も図る必要があるのだ。

 とはいえ、サーバを冷やすための空調の設定温度を上げることは、サーバが壊れる可能性があるため難しい。従って、空調機が出す冷風とサーバが吐き出す温風が混ざらないようにするのが効果的だ。また、空調機近辺の冷気を空調が吸い込めばホットスポットの原因にもなり、空調機を増やすこと(電力が増える)になりかねない。また、折角IT機器に送り込んだ冷気が、排気される暖気と混ざることも、結果的に冷えにくくなってしまうため、同じく空調機を増やすまたはパワーを上げることになりかねない。

 自社のサーバルームなどでサーバを運用している場合、このような空調設備の改善は難しいが、グリーンに配慮したデータセンターでは、設計時より空調や熱効率を考慮している。また、グリーンに配慮したデータセンターでは、変電設備なども効率の良いものを採用しているため、その部分でも温室効果ガス削減に効果を出している。

 同社のデータセンターの場合、新しいデータセンターでは熱効率などに配慮したデータセンターを構築。さまざまな取り組みを行いPUE(Power Usage Effectiveness)削減を実現しており、具体的にはPUE1.3を目指している。

 ただし、PUEの算定に関しては、当初標準化がされていないなどの指摘を受け、PUEを提唱しているThe Green Gridも標準化に向けて取り組んでいる。現在では、測定場所や測定周期、平均値の考え方がすでに反映されるようになっている。また、同じ電力を消費するIT機器でもより多くの仕事(データの入出力)をしているか否かで、グリーンの差別化を見せる指標「DCeP(Data Center Energy Productivity:エネルギー生産性)」も登場している。しかもそのデータ(ビット)の価値を、差別化して評価することも考えており、ここまでくると、グリーン=無駄をなくすということを意識せざるをえない。

 また、同社では既存のデータセンターにおける空調設備なども工夫。まず、サーバルーム内の不必要なものを排除し、「モノを減らすこと」で効率を改善。コンソリデーションを行ったうえで、独自のキャッピング技術を用いることで、既存データセンターにおいても冷却効率を上げ、結果として消費電力の削減に成功した。そして、これらのグリーンな取り組みを通したさまざまな削減効果については、最終的にはユーザーへ還元されることになるという。

グリーンITへの対応は「IT機器更改時」と「キャパシティオーバー時」

 このように、グリーンデータセンターの利用は温室効果ガス排出削減に効果的だ。しかし、秦氏は「繰り返すが、グリーンITはエコへの取り組みの1つにしかすぎない。まず、全社的にエコ活動を考え、その中の1つとしてグリーンITにも取り組むべきだ。従って、グリーン全体について話ができるアウトソーサーとの話し合いも重要だろう」と強調した。

 では、実際にはどのようなタイミングで取り組むのがよいのだろうか。秦氏は、データセンターへの移行や切り替えは、「更改」のときや「サーバのキャパシティオーバー時」が圧倒的に多いという。

 秦氏は、「グリーンITは、温室効果ガス排出量の削減が最大の目的だが、やはり企業である以上、無尽蔵にコストをかけるわけにはいかず、TCOやROIの観点も必要だ。そのため、更改やサーバのキャパシティオーバー時などは、どちらにせよシステムの変更や移行を伴うので、その際により環境に配慮したシステムにするのがコストの面からも効果的だろう」と説明した。

著者紹介

大津 心

@IT情報マネジメント編集部


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