目標から逆算すれば、営業予算を達成できる──ソフトブレーン達人に聞く“営業の極意”(1)(3/3 ページ)

» 2009年09月08日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]
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各スタッフの活動、強みを統制する“マイクロマネジメント”が大切

 これまで述べてきたプロセスシナリオは営業プロセスに関するものだったが、これは営業部門内だけではなく、関連部門も含めて策定するとより効果的だという。例えば、営業スタッフが訪問した後に、コールセンターからフォローの電話を掛ける、設計開発部門で商品の設計変更があれば、その情報を自動的に商品データベースに反映し、営業スタッフにも連絡する、といった具合だ。

 また、プロセスシナリオには、「個々人の暗黙知になりがちな営業スキルを共有・継承できる」メリットもある。例えば、具体的な営業テクニックとして、ある段階に至ったら「受注の際は、いつもどなたの意見を参考にされていますか」と決裁権を持つ担当者を聞き出す方法がある。一見、当たり前のような質問だが、自然にこうした質問ができるようになるには、ある程度の経験が必要だという。

 「営業経験が浅いスタッフは、こうした質問自体を発想できないし、発想できてもどのタイミングで聞けばいいのか分からない。そこで、プロセスシナリオにこのセリフを組み込んでしまう方法がある。つまり『どの段階で、何をチェックすればいいのか』に加えて、『そのためにどんな質問をすればいいのか』も追加し、たとえ新人でも一定レベルの活動ができるような営業プロセスとするわけだ。プロセスシナリオによって、あらゆる暗黙知を明らかにし、属人的な要素を極力排除することで、営業組織全体のスキルを底上げできる」(秋山氏)

 ただ、ここで懸念されるのは、そうした属人性の排除が、営業スタッフのモチベーション低下につながらないかということだ。確かに組織全体の活動を効率化・均質化できるが、営業とは“自分を売り込む仕事”といった考え方もある。プロセスシナリオによって、「誰でも一定の活動ができる、一定の成果が望める」環境を用意することで、自分の特性やスキルが公開、あるいは制限されてしまうことに、抵抗感を抱く向きも多いのではないだろうか。

 これに対して秋山氏は、「属人性を排するとは、個性を無視するということではない。むしろ尊重し、積極的に生かすことだ」と力説する。例えば、ヒアリング能力に長けたスタッフがいれば、「そのスキルをプロセスシナリオに組み込んで組織全体に提供してもらうとともに、“ヒアリングのプロ”として、さまざまな案件のヒアリング業務に積極的に同行してもらう方法がある」という。

 「組織が業績を伸ばすうえで大切なのは、“人に仕事を付けるのではなく、仕事に人を付ける”という考え方だ。組織営業に1人で何でもこなしてしまうスーパースターはいらない。何らかに秀でた人のノウハウを、組織全員の財産にするとともに、そのスキルを得意分野で存分に発揮してもらう。その意味で、プロセスシナリオとは、“適材適所”を推進する取り組みともいえる」(秋山氏)

ALT 「プロセスシナリオは“適材適所”を推進し、各スタッフの個性、スキルをより有効に生かすためのもの」と語る秋山氏

 実際、同社でもプロセスシナリオを使っているが、個々人の個性が抑制されるといったことはなく、1人1人が自分の強みを生かして活動しているという。

 秋山氏は、「 1年間はたったの52週間。物理的制約が決まっているうえ、市場は依然として厳しい状況にある。こうした中、精神論や“どんぶり勘定”はもはや通用しない。目標から1人1人の活動、1人1人の強みまで、きめ細かく状況を把握し、組織全体の動きを確実に管理・統制する“マイクロマネジメント”の実践が、勝つための必須条件になるだろう」とまとめた。

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