情シス部門とユーザー部門、恩讐を超えて社内を幸せにするEUC(1)(1/2 ページ)

エンドユーザー・コンピューティングは、ホワイトカラーの生産性改善に大きな力になるが、利用者と管理者で利害が対立することもある。こうした利害対立を避け、相互に有用なものにするにはどうすればいいかを解説する。

» 2009年09月30日 12時00分 公開
[村中直樹,クレッシェンド]

 筆者は、マイクロソフトの表計算ソフトの「Microsoft Office Excel(Excel)」を利用した業務システムの構築やコンサルティングを主な業務としている。もともとはシステムインテグレータに籍を置き、基幹システムの構築にかかわっていたが、ひょんなことから利用者側の立場でエンドユーザー・コンピューティング(End User Computing:EUC)を推進する側に回った。

 利用者側に立つようになって感じるのは、管理者側から見たEUCのイメージはネガティブなものが大半で、利用者側と管理者側の利害が相反する立場を取る場合が多いということだ。

 多くの企業で「統制したい情報システム部門」対「自由にやりたい利用者部門」のような対立の構図が生じている。しかし、「EUC推進のために、管理手法を情報システム部門に学ぶ」「情報システム部門自身のためにEUCを推進する」という付き合い方もあるはずである。本連載では、利用者部門にも情報システム部門にもメリットがあるEUC推進について、事例を通じて紹介する。

利用者部門の現状

 現場主導の業務改善は、日本企業の得意分野である。特に製造業ではQC活動をはじめさまざまな成果を上げてきたが、ホワイトカラーの現場でも同様の試みは行われており、EUCはその代表格といえる。

 企業向けのPCの多くにExcelが導入されていて、業務改善の実現手段としても広く用いられている。

 筆者が仕事を通じて出合った多くの企業は、ちょっとした手作業を自動化する小さなツールから、複数部門にまたがる大掛かりがかりなシステムまで、実にさまざまな規模のEUCを実現していた。いずれも、利用者部門の社員たちが自発的に作り上げたものである。

 基幹システムのデータを活用し始めるようになると、情報システム部門の“干渉”を受け始める。その場合、セキュリティだのドキュメントだの不便なことが多く、窮屈に感じてしまう人が多いようだ。

 しかし、業務の複雑化や雇用関係の多様化など、企業を取り巻くリスク自体は高まっている。機密情報を安易にFAX送信したり、運搬中に酒を飲みにいくことはないだろうか。いつまでも計算ミスをし続けるプログラムや、スプレッドシートはないだろうか。

管理者側から見た問題と対立の構図

 同じEUCを、管理する側(特に情報システム部門)から見ると、知らぬ間に複雑な計算を伴う仕組みが増殖し、コントロールが効かない状態にある、と映る。すなわち、処理結果の正確性について保証がなく、マクロウイルスなどセキュリティ上のリスクがあり、いつ不具合を起こすか分からない、中身を確認したくてもドキュメントも存在しない、といった具合に頭の痛い問題だ。

 現実問題として、情報システム部門が想定している管理レベルは、利用部門で実践するには敷居が高い。そこで情報システム部門がユーザー部門から管理を引き取るという発想が出てくるし、実際にそうしている企業も多いが、利用者部門からのリクエストが多過ぎたり、個別の対応を求められて対応できなくなったり、対象となるファイル数が膨大であるなどの理由で投げ出してしまうケースが多い。

 そうかといって、管理レベルを利用部門に合わせ下げ過ぎると、今度はトラブル対応に時間を割かれてしまう。

 どちらに転んでも情報システム部門の仕事が増えてしまうのであれば、「EUCは歓迎しない」という意識になってしまう。

情報システム部門と利用者部門の関係

 このように、EUCの管理方法については情報システム部門と利用者部門の利害は一致しないと考えられるので、対立は根深いものになりがちである。

 しかし、情報システム部門と利用者部門はお互いを必要としていることを忘れてはいけない。情報システム部門は、そもそも利用者部門に対して業務に合った情報システムを提供するのが役割であり、単独では存在意義がなくなる。利用者部門は、情報システム部門がいなければ、全社的なデータの取りまとめなど、業務で必要とするデータの入手すらおぼつかなくなってしまう。

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