特別企画:ROI最大化を実現するCPM きめ細かな管理・統制が、ROI最大化の秘けつ(3/3 ページ)

» 2009年11月02日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]
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CPMのハードルは日本企業の文化

 ただ、笹氏は「こうした管理体制をどうとらえるかは、企業の文化や考え方にかかわる重要なテーマだ」と付け加える。ある種の“あいまいさ”を重んじてきた日本企業においては、責任範囲や評価指標の明確化が受け入れられにくい側面があるためだ。

 しかし笹氏は、「役割や評価指標の明確化は、各組織・各人の適正な評価を守り、適切な対策を打つうえで不可欠なものだ」と力説する。例えば、製造業において、海外から原材料を調達している場合、為替レートが製造原価に大きく響く。しかし、こうした評価体制があれば、製品の販売利益が低かった場合、営業努力が足りなかったのか、為替レートの影響を受けたのかなど原因を切り分けて、関係者の適正な評価、適切な対策を実施できる。

 「サプライチェーン・マネジメントでも、部門間・組織間の利害関係調整が大きな課題となるが、CPMも本質的には同じ問題だ。全関係者から一定の納得が得られるKPIの設定は、CPM実践の最大のハードルとなるが、これが実現できれば、部門間調整、文化、慣習上の問題は半ば解決したことになるはずだ」(笹氏)

 また、実績値や目標予算を短いスパンで入力・申請させることが、現場層に受け入れられづらいという問題もあるが、この点については、頻繁に入力してもらうための直接的なインセンティブを用意するか、業務手続きをシステム化し、目標予算申請に承認を得てからでないと発注手続きができない、といった仕組みを構築してしまう方法があるという。

丼勘定は通用しない。目標に向けてきめ細かく“統制”すべき

 ただ、笹氏は「いずれにせよ、取り組むとなれば、トップダウンで意思統一を図り、強力にリードする統制力が不可欠だ」と強調する。特に昨今の経済状況をかんがみれば、常に最大の投資対効果を狙う必要があるが、「そこで“売り上げ至上主義”といった場当たり的、精神論的な活動に走るようでは継続的な利益向上は望めない。市場の動きに機敏に反応して、正しい方向に合理的にリードする力が必要」なためだ。

「不確実性が高い市場環境にあるいま、全社目標に向けて組織の動きを収束できる、きめ細かな管理・統制が不可欠」と語る笹氏

 先のサービス業の例などその最たるものだろう。「CS向上」を狙う以上、サービスレベル向上を通じたリピーターの獲得、顧客1人当たりの生涯価値増大が最優先であると、全関係者に理解させなければならない。

 製造業も同じだ。市場規模は常に変動している。過去最高の売り上げを記録しても、シェアで他社に譲ってしまうこともあれば、トップシェアを記録しても、市場規模が縮小しており、利益は前年同期比を割ってしまうこともある。自社の目標は何か、そのために自分がやるべきことは何か、全員が自覚していなければ、拠点間での食い合いなど、ちくはぐな事態に陥る可能性もある。

 「厳しい状況の中、継続的な利益向上を狙うためには、中長期的な視点で自社の目標や強みを見定めなければならない。そのうえで目標に向けた戦略を立て、KPIを通じて、組織全員の役割を明確化し、短いスパンで軌道修正しながら、着実に組織全体をドライブしていく姿勢が不可欠だ」

 笹氏はこのように述べ、「もはや丼勘定は通用しない。組織、人、資金といったリソースを大切にし、ピンポイントの目標に向けてそれぞれの力を有効に生かす、シビアな管理・統制が今後ますます不可欠になるはずだ」と締めくくった。

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