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» 2010年04月07日 12時00分 UPDATE

何かがおかしいIT化の進め方(45):持続可能社会とITシステムはどう在るべきか(前編) (1/4)

年々、関心が広がっている地球温暖化問題。日本は「2020年までに1990年比でCO2を25%削減する」と国際社会の場で世界から突出した約束をした。しかし、それをそのまま受け入れてしまっても良いものだろうか? CO2削減の動きを作り出している“背景”について、われわれが自ら考えてみる必要があると思う。

[公江義隆,@IT]

 この数年で、「地球温暖化の原因はCO2」「CO2削減が至上課題」といった大勢になった。しかしその一方で、メディアにはあまり取り上げられない“まじめな”懐疑論も根深く存在している。

 今回は、いままで受動的に見聞きするだけだった「地球温暖化とCO2の関係」を自分なりにフォローしてみた。数多くの原論文を読むような能力も気力ももはやないから、誰かのフィルターをとおした内容にならざるを得ない。それでも、それらの情報を基に自分なりに考えてみると、いろいろなことが見えてくる。その先に浮かび上がってくるのは、持続可能な社会に求められる現在とはまったく異なる価値観の社会・文明だ。

CO2の増加は気温上昇の“原因”なのか、“結果”なのか

 地球温暖化の問題を考える糸口として、まず地球の過去の大きな温度変化から調べてみる。少なくとも過去40万年にわたり、約10万年の周期で、温度の幅が約12度、CO2濃度は約180ppm〜280ppmの範囲で、のこ切り歯状の変動を繰り返している(図1)。

ALT 図1 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)第3次報告書に記載された温度とCO2濃度。ロシアの南極基地の氷床を3600mボーリングし、筒状の氷柱中の酸素同位元素や気泡の気体組成の分析から得られた
(気象庁ホームページより)

 さらにこの間に2万年、4万年周期の気温、CO2濃度の変動がある。これらは地球軌道の変動によって生じる太陽照射の変化による現象と考えられているが、太陽照射量の影響だけでは気温の変動量を説明し切れないという。 

 図1の変動を詳しく分析し、「気温が上がった約800年後に、CO2やメタンの濃度が上昇するという一定のパターンが見られる」という研究もある。そうならば、温室効果ガスが気温上昇の直接的な原因ではなく、自然界には“気温変動を増幅する仕組み”が備わっていることになる。地球温暖化CO2原因説の懐疑論者には、「現在観測されている気温上昇は、自然界の“仕組み”によって増幅された太陽活動の変化の影響」とする主張が多い。

 また、1890〜1990年の100年間で、温度は0.75度、CO2濃度は65ppm上昇したと言われている。人間の活動によって増加してきたCO2が温暖化の主要因なら、温度も一貫して上昇してきたはずなのだが、図2のデータでは、1940年ごろまで上昇していったんピークに達し、その後しばらく下降傾向が続いたあと、1980年ごろから再び急上昇に転じている。

ALT 図2 地表気温の変動。温度計での計測が始まった1880年から現在に至るまで変動を繰り返している
(ゴダード宇宙科学研究所ホームページより)

 こうした変動について、1760〜1830年代にかけて起こった産業革命以前の温度変化については、「気温は数十年、数百年、数千年という単位でも細かな変動を繰り返していること」や(注1)「太陽の活動データや、頻発した火山活動の影響などによる太陽光照射量の減少」など、自然現象を根拠に、かなりの説明はできるとされている。ただ、この20世紀後半における急速な温暖化については、現在分かっている自然条件を基に作られたメカニズムだけでは説明できず、「産業革命により、温室効果ガスが急激に増加した影響」との主張がなされている。


注1: 例えば、縄文時代は現在よりかなり暖かく、海面も高かったという。10世紀ごろのグリーンランドは、現在のような氷と凍土の地ではなく文字どおり緑の大地であったらしい。17世紀にはヨーロッパで氷河が大幅に伸びたという記録もある。


 だが、前述のように、長期データにも短期データにも「温度上昇がCO2濃度上昇に先行する傾向が見て取れる」という報告もなされている。CO2濃度と気温変動の間にある“仕組み”は、それほど単純なものではないようだ。

「CO2を減らせば温暖化が防げる」と言い切れるか?

 水蒸気やCO2、メタンなどに温室効果があるのは理論的に正しいし、気温が上がれば海水などからの水蒸気や温室効果ガスが大気に放出され、濃度が上がるのも事実であるから、温度と温室効果ガス濃度の間に相関関係があることは間違いない。産業革命以降、人間の活動が相当量のCO2を排出してきたのも、20世紀後半以降のCO2濃度や地表温度が上昇しているということも事実であろう。

 しかし、「このCO2濃度の上昇が、すべて人間の活動によるものなのか」「地表温度の上昇の主要因が人間の活動から排出されたCO2によるものなのか」については、十分な解明はされてはいないようだ。20世紀以降だけの変化を切り取った1枚のグラフ上で見せられれば、一般の人の多くは「温度上昇は産業革命後のCO2が原因」と説得されてしまうだろうが、長い地球の歴史上にあった変化から見れば、微々たる期間の微々たる変化量に過ぎない。

 このようにあらゆる情報を俯瞰(ふかん)して見ると、地球温暖化CO2原因説は、まだ「現在分かっている自然現象だけでは温度上昇を説明し切れないから、産業革命以降に増加しているCO2が原因であろう」という消去法的な推論レベルの話のように感じられる。また、温室効果の影響度の90%を占めると言われる水蒸気の影響を論じた研究がほとんど見当たらず、CO2にのみ関心が集中しているのも気になる。

 一方で、地球温暖化CO2原因説に対する数ある懐疑論・批判論には、「そこまではまだ言い切れない」と学問的立場から表現上の問題点を指摘するストイックなものから、「本当に気温やCO2濃度は上昇しているのか?」「本当に気温の上昇はCO2によるものなのか?」「CO2地球温暖化説は、環境ビジネスや金融業界や一部政治家、研究者など、これによって利益を得ようとする人たちの策謀ではないのか?」などなど、さまざまな意見がある。しかし、そうした懐疑論者も疑問を呈しはしても、自説を十分に説明し切れる状況にはないようだ。

 さらに、地球温暖化CO2原因説の研究者によるデータの隠ぺい、都合の良い部分だけのつまみ食い使用や、電子メールサーバのハッキングから発覚したIPCC関係者によるデータねつ造疑惑、懐疑説の研究論文の排除疑惑、IPCCの発表資料内容のずさんさや誤りなどが、さらなる混乱の火種になっている。

 このような現状を見ていると、素人の感想として、学問的には研究途上、まだ全容の解明には至っておらず、「CO2を減らせば温暖化は防げる」と単純に言い切れる状況でもないように思える。

 ベースにしている、樹木の年輪の幅から求めた過去の気温や、南極の表面下数千メートルの氷柱の成分から求めた数十万年前の気温、大気の成分のデータ精度はどの程度のものなのだろう? 碁盤目に分割した地球に流体力学の方程式を適用した大気や海洋循環のシミュレーション・モデルの精度はどの程度のものなのだろうか? コンピュータ・シミュレーションではじき出される数十年先の予測数値の有効けた数はどう考えれば良いのだろう?

  おそらく同じような考え方に基づいた大気循環などのモデルで算出されるのであろう天気予報(毎年の長期予報)の結果を見るにつけ、素朴な疑問を感じるのだが……。

地球の温度変化は、多様な事象が絡み合って生じている

地球の温度変化に関する研究では、温度に影響を与える仕組みや要素として、現在、以下のようなことが考慮されている。興味のある方はざっと目を通してほしい。地球の温度は、現在分かっている範囲でもこれだけの要素が複雑に絡み合った結果であり、「人類活動によるCO2が温暖化の原因」とストレートに断言できるほど単純な構造の問題ではないのだ。

  • 暗い宇宙空間に浮かんでいる地球は、薄い空気層に取り巻かれ、太陽光線から得るエネルギーと地球が宇宙空間に放出する熱のバランスの中で、その温度を保っている
  • 太陽が発するエネルギーは太陽活動の変動により刻々と変化する
  • 地球上の日射量は、2万年、4万年、10万年周期で太陽の周りを回る地球の軌道の影響を受ける
  • 地球の温度が下がり地球表面の氷面が増えると、太陽光の反射が増えて気温が下がる。また、火山噴火などにより空中微粒子が増加したり、雲で光線がさえぎられたりしても、地球の受け取る日射量が減り気温が下がる。ただし、空中の微粒子の中には熱を吸収して温室効果に寄与するものもある
  • 地球を取り囲む空気層の保温機能(温室効果)により、地球の温度が14〜15度に保たれている。この温室効果がないと気温はマイナス18〜19度になるという
  • この温室効果の90%は水蒸気によるものであるが、地球温暖化問題ではCO2(炭酸ガス)、メタンガス(保温機能はCO2の21倍)、一酸化二窒素ガス(同じく310倍)、フロン代替ガス(同じく数百倍)などが温室効果ガスとして問題にされている
  • 温室効果ガスは、大気中や海中、陸上のいろいろな生物、物質に吸収されたり、逆に放出されたりする。海水中での化学反応によって吸収/放出される場合もある。また、物質、生物、海水の温度が上がると水蒸気、CO2、メタンガスなどが大気中に放出されて大気中の温室効果ガスの濃度が上がる。ただし、どの程度の深度の海水までがこの対象になるのかは分かっていない
  • CO2から生成された有機物には、いったん地中や海水中に堆積された死骸や化石が土中に溶け込み、長い期間の地殻変動で再び地表に現れ、分解されてCO2に戻るという「炭素循環」という現象がある
  • 地球表面の温度には、上記のほか海洋深層水の大洋循環が関係するという報告もある
  • 太陽光や温室効果ガス、そのほか何らかの原因による温度上昇が引き金になって、海水や地面から水蒸気や温室効果ガスが大気に放出され、さらに気温が上昇する。この高温化によって有機物の分解が進み、CO2の排出がさらに増える、といった「ポジティブ・フィードバック効果」の影響を挙げる研究もある
  • 地球の温度が上がると、宇宙空間へ放出する熱量が増えて温度上昇を抑える(地球の温度を安定化させる)ネガティブ・フィードバックが働く
  • CO2を増やす要素として、化石燃料の燃焼、草や木など有機物の分解や燃焼などが問題視されている。また、森林破壊によるCO2吸収量の減少も注目されている
  • 太陽活動による宇宙線の影響や、宇宙線と雲の生成、およびそれによる温度変化を論じた研究もある

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