ここまでで、計画段階で実施する5つのタスクを見てきました。次に、ビジネスアナリシスの実行段階で実施する「ビジネスアナリシスのパフォーマンスをアセスメントする」を見ていきましょう。
このタスクでは、ビジネスアナリシスのアクティビティが、できる限り効率よく実行されるようにパフォーマンスを監視し、必要な是正処置を行います。
まず、計画に基づいて実施されるビジネスアナリシス活動のパフォーマンスを測定するメトリクスを決定します。メトリクスには、ビジネスアナリシス計画で指定された成果物の納入日、要求への変更頻度、レビュー数、ステークホルダーからのフィードバックなどがあります。
ここでの望ましいメトリクスは、上に挙げたような、ビジネスアナリストがプロセスの改善効果を認識できるような“具体的に測定可能なもの”だといえます。
次に、パフォーマンスを評価した結果、ビジネスアナリストは予防処置や是正処置を講じ、必要に応じて計画を変更します。
これらの活動結果は、将来のビジネスアナリシス計画に活用される組織のプロセス資産として生かされます。特に、ビジネスアナリシスの活動で満足のいく結果が生み出されなかった場合、その結果を作り出したプロセスをレビューし、 今後の改善に向けた教訓として蓄積することが重要だといえます。
今回見てきた活動が示すとおり、ビジネスアナリシスも1つのプロジェクト活動であり、計画やモニタリングなどを含めたプロジェクトマネジメントの下で実施されることが分かります。プロジェクトマネジメントの知識体系では、PMBOKが有名です。
そこで最後に、BABOKとPMBOKの関係を見ておきましょう。筆者は、業務でプロジェクトマネジメントのコンサルティングを行うことがあり、計画とモニタリングについては、PMBOKの知識エリアを活用しています。今回ご紹介した「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」は、PMBOKの領域に重なる部分が多いため、その関連を整理しておきたいと思います。」
BABOKのタスク | おおむね該当するPMBOK第4版のプロセス | |
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知識エリア | プロセス | |
2.1 ビジネスアナリシスへのアプローチを計画する | 統合マネジメント | プロジェクト憲章作成 |
2.2 ステークホルダーの分析を主導する | コミュニケーションマネジメント | ステークホルダーの特定 |
2.3 ビジネスアナリシスのアクティビティを計画する | スコープマネジメント | スコープ定義、WBS作成 |
タイムマネジメント | アクティビティ定義、アクティビティ所要期間見積もり、スケジュール作成 | |
2.4 ビジネスアナリシスのコミュニケーションを計画する | コミュニケーションマネジメント | コミュニケーション計画 |
2.5 要求マネジメントプロセスを計画する | スコープマネジメント | 要求事項定義 |
2.6 ビジネスアナリシスのパフォーマンスをマネジメントする | 統合マネジメント | プロジェクト作業の監視コントロール |
PMBOKでは、このほかに「リスク」「品質」「人的資源」などの知識エリアがあり、より詳しくプロジェクトマネジメントに必要な知識について述べています。BABOKだけでなくほかの知識体系を理解し、併せて有効活用していくことで、ビジネスアナリシスの品質向上と、ビジネスアナリストのスキルアップにつながります。読者の皆さんもぜひ参考にしてみてください。
次回は、ビジネスアナリシスの支援的な活動である「引き出し」と「要求のマネジメントとコミュニケーション」の知識エリアを紹介します。
堀江 弘志(ほりえ ひろし)
株式会社豆蔵
ユーザー系のSIerでソフトウェア開発やプロジェクトマネジメントに携わった後、2005年より株式会社豆蔵に在籍。現在は主にプロセス改善や標準化に関するコンサルティングや、プロジェクトマネジメント教育を担当。PMP
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