管理コスト削減のキモとなる構成管理DBを学ぶ：コスト削減時代の資産管理（1）（3/4 ページ）

[武内 烈（株式会社コア），＠IT]

PCのライフサイクル管理を考える

　「調達−導入−運用−廃棄」というPCライフサイクルを細分化すると、下図のように表される。

図4 PCライフサイクル管理（LCM）（クリックで拡大）

　このライフサイクル管理では、前項で説明したような複数のロール／タスクが異なる部門の管理者や運用者、ユーザー、ユーザー管理者が関係することから、「構成管理DBへどのようなアクセスを許可し、統合データへの参照／更新権限をどうするか？」を定義しなければならない。

　さらに、ロールとタスクによって、参照されるデータの表現の仕方が異なる場合があるため、ユーザーインターフェイスの設計では、ロールとタスクを考慮した設計が求められるのだ。

　このような配慮がされていないユーザーインターフェイスの場合、ユーザービリティが悪く、組織横断的に部門をまたがって管理された情報を共有することが困難になる。その結果、データフォーマットを変換する必要性や、データをいったん整理し直してから利用するような事態が発生し、余計な手間が発生してしまう。

　一方で、“組織横断的に複数部門の利用者を考慮した構成管理DB”を活用してライフサイクル管理を実現すると、以下ような項目が実現可能となる。

PCライフサイクル管理で考慮すべき代表的なフェイズ

1．標準PCの設計

　　　インストールイメージ設計

2．PCキッティング

　　　資産台帳登録、ソフトウェア管理台帳、IPアドレス台帳、保守作業台帳

3．PC納入・設置

　　　オンサイト設定

4．ヘルプデスク・運用

　　　廃棄・修理・移設

　　　パッチ提供

　　　資産管理

　　　リモートサービス

　　　移設

5．保守

　　　サポート

　　　月次報告

　　　ハードウェア保守

6．PC廃棄

　　　廃棄データ保存

　　　PCデータ消去

　　　リユース・リサイクル

　　　廃棄処分

7．棚卸

8．ソフトウェア資産管理

PCライフサイクル管理に関係する代表的な組織または部門（ロール）と職務または作業（タスク）

1．ユーザー

　　　実際のPCの利用者

2．ユーザー管理部門

　　　PC利用を管理するユーザー部門

3．ヘルプデスク

　　　ユーザーサポートを実施する部門

　　　移設・返却・修理・サポートの窓口

4．キッティング

　　　初期出荷

　　　設定変更

　　　移設・回収・廃棄・修理を実施

5．キッティング管理者

　　　キッティングの指示

　　　修理・廃棄などの管理

6．資産管理部門

　　　棚卸、ソフトウェア資産管理

7．管財部門（保守契約管理）

　　　保守契約内容の管理・更新

8．リース・レンタル部門（リース・レンタル契約管理）

　　　リース・レンタル・リユース・ンタル・リユース・販売など管理

9．ハードウェア・ソフトウェアベンダ

　　　ハードウェア保守・修理の提供

　　　ソフトウェアバージョンアップなど提供

　そして、このようなPCライフサイクル管理を可能とするためには、まずは各部門をまたがった業務フローを、フローチャートに落とさなければならない。

　業務フローをフローチャートに落とし、効率的なPCライフサイクル管理を実現するためには、まず業務フローを正確に把握して見える化し、フローチャートに落とした段階ですでに効率的な業務フローとなっている必要がある。つまり、「業務フローの実行をより効率化するためにシステムを導入し、データの一元管理と共有によって、効率的な情報共有や自動化を図れること」が必要条件だ。

　効率的な業務フローがフローチャートに落とされ、関係各部門が合意できる効率性が見える化されていることで、初めてシステム化することができるのだ。

　このことからも、ライフサイクル管理による効率化実現にはIT部門だけではなく、関係各部門を統括できる責任者（CIOまたはIT担当役員）がプロジェクトに参加していなければならない。

　実際、業務フローをフローチャートに落として効率化を図ろうとすると、多少なりとも「BPR（business process re-engineering）」を行わなければ、“本当の意味での全体最適化が困難な場合”に遭遇するため、IT部門だけで実施しようとすると部分最適化で終わってしまう可能性があるのだ。

　これでは何度最適化に挑戦しても、従来と同じような部分最適化にとどまってしまう。ライフサイクル管理の実現において、ここが最も重要なポイントなのだ。