明日のシスアド像を探る1日〜シスアド研修会レポートIT戦略トピックス(Topics: Report)(2/4 ページ)

» 2010年06月03日 12時00分 公開
[大津 心,@IT]

日本はハイコンテクスト文化であることを認識する必要がある

 内山氏は、まずコミュニケーション能力を上げるためには日本人の特性を知る必要があると強調。例えば、「日本人のコミュニケーションは『相手と共有する基盤(コンテクスト)』が多いことが前提の“ハイコンテクスト文化”であり、『論理性や明りょう性を重要視する“ローコンテクスト文化”』である米国とは対照的。ITという専門分野では、コンテクストが成り立ちにくいことを十分認識する必要がある」(同氏)と強調した。

 つまり、日本人同士の場合、常識や価値観といったコンテクストがお互いに多く存在することを前提にコミュニケーションをとっており、そもそもそうしたコミュニケーションが成立しやすい文化だという。逆にコンテクストが少ない米国やスイスなどの場合は、コンテクストが少ないことを前提にはっきりと論理的にコミュニケーションをとらないと、コミュニケーションが成り立ちにくい。ただし、ITという専門分野に関しては、人によって知識のばらつきがあるために、そもそもハイコンテクストが成り立ちにくい。従って、日本人がIT分野に関してコミュニケーションをとる場合には、コンテクストが少ないことを意識したコミュニケーションを心掛けなければならないのだ。

 これを踏まえたうえで、内山氏は「ハイコンテクストとローコンテクストの特徴を押さえたうえで、両方を身に付けたコミュニケーションを目指していくことが重要だ」と主張する。

コミュニケーションの極意は「段取り8割、現場2割」にあり

 そしてこのような理想のコミュニケーション能力を身に付けるのに最も重要なのは、「段取り8割、現場2割」だとした。

 「段取り8割、現場2割」とは、現場で実際に話す際の話し方のテクニックでコミュニケーション力を上げるのではなく、話す前の準備(骨子・主張と論理・補完)をきちんと行ったうえで対応することが重要だという理論だ。

 骨子を作る際には、「目的を1つに絞り、絶対にずらさない」ことや「論点を1〜4つに決める」ことが重要であり、「システム導入の承認を得ると同時に競合調査予算の承認も得たい」といった具合に目的が複数あると、交渉が失敗しやすくなるという。

 中でも特に重要なのが「論点を1〜4つに決める」ことだという。これは「自分が伝えたいことと、相手が知りたいことは違うことが多い」という前提に立ち、自分が伝えたいことではなく、相手が知りたいことを網羅して論点を考え、自分が伝えたいことは相手の論点に合わせて組み替えて伝えるというテクニックだ。この点について内山氏は、「この部分は現実的にはほとんどできていない。立場が違うと知りたいことも変わってくることを十分に理解しておくことだ。相手の知りたいことをあらかじめ書いておくことが重要だ」と説明する。

 主張と論理を作る際には、「論点ごとの主張を1行で表す言葉にする」「主張の根拠を考える」「結論を考える」の3点が重要だ。「論点ごとの主張を1行で表す言葉にする」では、主張は長すぎず短すぎないように1行にまとめる工夫をすることが重要であり、その主張には必ず根拠が必要であるという理論。自分の主張を構造化したり、ロジックツリーで分析したりすることで、根拠として不明確な点や弱い部分がよく分かるようになるというものだ。

 そして、主張と論理を考えるうえで最も重要なのが「結論を考える」ことだという。目的にきちんと答える「結論」を言葉にすることで、“相手の知りたいこと”に対して“答える”ことができるというのだ。

 その際には、「目的→結論→主張1→根拠1→主張2→根拠2」といった順で話すとなお良いという。

 最後に、話しても伝わりにくい情報を補完するのに有益なのが「コミュニケーションシートを作る」と「話す際は『入口』と『出口』だけ押さえる」だ。

 「コミュニケーションシート」とは、「目的・結論・論点・主張・根拠」の5つを盛り込んだコミュニケーションシートを事前に書くことで、話したいことを事前に整理できるというテクニックだ。さらに、「説明の初めの部分(入口=論点)と最後(出口=主張)を、しっかりと資料上に言葉として書いておけば、どんなに緊張しても主張がぶれることなく伝えることができる」とした。

 内山氏は「『コミュニケーションが得意だ』という人は多くない。逆に考えれば、コミュニケーションを改善すれば、一歩先に出るチャンスだ。コミュニケーションのコツはどれも難しいものではない。つまり『誰にでもできる当たり前の取り組みを誰よりも徹底的に実施すること』こそがコミュニケーションを上達させる最大のポイントだ」と語り、講演を締めくくった。

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