明日のシスアド像を探る1日〜シスアド研修会レポートIT戦略トピックス(Topics: Report)(3/4 ページ)

» 2010年06月03日 12時00分 公開
[大津 心,@IT]

シスアドに必要なのは、PMとBAの能力

 続いて登壇したのはIIBA日本支部総務担当理事の安藤秀樹氏。同氏は、「シスアドにとってビジネスアナリシスとは?」と題した講演を行った。

IIBA日本支部総務担当理事 安藤秀樹氏

 ビジネスアナリシスとは、「企業が抱える問題・課題を解決し、さらに業務を良い方向へ持っていくために、その構造や思想、業務内容を理解・共有するためのさまざまな活動や技術」を総称したもの。

 言い換えると、顧客にとって本当に価値のあるもの、必要とされていることを業務の関係者と一緒に背景から掘り起こし、明確にしていく活動だ。

 安藤氏は冒頭、ソフトウェア開発プロジェクトの状況について、調査結果の数字を取り上げ、「ソフトウェア開発プロジェクトの成功率が2003年の26.7%から31.1%に上昇した」と紹介。一方で、納期遅れや失敗の原因は、「要件定義が長くなった」が一番多く、「設計作業が長くなった」や「企画作業が長くなった」など上流工程部分の問題が続く。一方で、「何らかの形で定量的な管理手法を導入している」場合には、導入していない場合に比べて、成功率が倍近く(している場合は45.6%、していない場合は26.7%)になることも分かっている。これらの点を受けて同氏は、「上流工程、特に不十分な要件定義がプロジェクト失敗の原因としては大きいようだ。一方で、定量的な管理をすれば成功率が挙がることも分かった。この点は見逃せないポイントだ」とコメントした。

 また、プロジェクト成功のポイントとなる「要件定義」について、あらためて解説。 安藤氏は、「要望=まだ整理されていないあいまいなもの」「要求=要求提出者が整理したもの。ただし、主観的」「要件=要求を聞いて受け取り側(第三者)が整理したもの。それなりに客観的」と言葉を定義。あいまいな要望や要求を整理し、プロダクトスコープやプロジェクトスコープ、コストなどを明確化することが重要だとした。

 これらの要求定義・要件定義を手助けするのがBABOKだ。ユーザーの要求・要件を正確に聞き取り、そのニーズを基にソリューションを提供するのが主目的となる。BABOKの具体的な目的には、「ビジネスアナリシスという専門職を定義する」「実践者のための合意ベースラインになる」「ビジネスアナリストとして期待される知識とスキルを明確化する」などが挙げられており、これらを実践することで、上流工程における失敗を防ごうとしている。

 安藤氏は、ビジネスアナリスト(BA)、プロジェクトマネージャ、ITアーキテクトをそれぞれ、「BA=ビジネスの価値を明確化して業務を分析し、新しいビジネス構造を決定する」「プロジェクトマネージャ=プロジェクトを推進する」「ITアーキテクト=ビジネス構造をITシステムとして実現する方法を決定する」と定義。ベンダ企業では、PMとITアーキテクトが、コンサルティング企業ではBAとITアーキテクトの職務が求められると説明。主にユーザー企業において活躍するシスアドの場合、PMとBAの役割が求められていると定義した。

 同氏はこれを受けて、「ユーザー企業内で活躍するシスアドは、BAとPMの業務が求められている。これはつまり、企業内のビジネス課題を明確にし、ビジネス構造を決定することが求められているのだ。シスアドはこのようなニーズに応えてBAになるべく、BABOKの学習も重要なポイントになってくるはずだ」と説き、講演を終えた。

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