明日のシスアド像を探る1日〜シスアド研修会レポートIT戦略トピックス(Topics: Report)(4/4 ページ)

» 2010年06月03日 12時00分 公開
[大津 心,@IT]
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IT人材の活路は「プレゼンス向上」や「機会創出」にあり

 次に登壇したのは、日本システムアドミニストレータ連絡会会員 三木裕美子氏。同氏は「ユーザー企業におけるIT人材の活路」と題した講演を行った。

日本システムアドミニストレータ連絡会会員 三木裕美子氏

 三木氏は冒頭、ユーザー企業におけるIT人材の本音として、「ユーザー企業に入社する社員の多くは、その企業における“本流”である営業や企画などをやりたくて入社したのにIT部門に配属された者が多い」と指摘。その結果、「本流ではない疎外感」や「周囲からの過小評価」を受け、“飛ばされた”ような認識や意識を持つ者が多いという。

 また、IT部門は「経営からの投資・コスト見直し圧力」や「ユーザーからの高いサービスレベル要求」「ローテーションの長期化・固定化といったキャリアへの不安」「ベンダとの役割や機能の重複」「SOX法などの社会からの規制強化」といった外圧があらゆるところからかかっており、悩みが多いのが通常だ。

 一方で、ITはもはや企業に必須の技術・スキルとなっており、専門スキルからコアスキルへ変化しつつあると三木氏は指摘。例えば、「PCがまったく使えない同僚がいた場合、昔であれば“営業は足を使ってなんぼだ”といった言い訳が通用したが、いまでは“困った人”扱いを受けるようになってきている」という。実際問題として考えても、業務遂行においてWordで書類を作ったり、Excelで計算する、電子メールで連絡する、といったスキルは必須のものであり、 「ITを使っていかに企業活動に寄与するかを考える人材」こそが、企業において必須になりつつあるとした。

 ユーザー企業におけるIT人材活用のシーンを挙げると、「テニス用品販売の販売促進」「銀行の融資業務の改善」「レストランチェーンにおける取引先との情報共有」「卸業者の受発注業務と在庫管理業務の改善」など、枚挙にいとまがない。このように、企業戦略を個別施策に落とし込んだ場合、実際の手段としてはITがほぼ確実に候補に挙がり、「それを活用できるIT人材は、企業活動に貢献できる人材だ」と言うことが可能だ。

 このような点を踏まえたうえで、IT人材に活路を示すための施策には、「ビジネス部門への貢献度評価制度導入」や「下請け型から提案型への意識改革」「IT経験者の経営層参画」「人事戦略におけるITキャリアの組み込み」などが挙げられる。この点について、「つまり、ユーザー部門から頼られる存在になることが重要だ」(三木氏)と説明した。

 さらに具体的に考えると、IT人材は従来の受動的な態度から、自ら提案していく“主体的・自律的”な態度や、他社事例や最新事例を進んで取り込む積極性、多少の品質低下を許容し、効果の早期刈り取りを狙うスピード感、慣例にとらわれない自由な発想、自分が仕事を支えているんだという誇りや自信、言葉の壁や地域の壁を越えたグローバルな視点などを備えた役割が求められているという。

 これらの点を踏まえ、IT人材の活路を総括すると、経営やユーザーを含めITの重要性を再認識させることや、評価報酬体系の再整理をしたうえでの「プレゼンスの向上」や、業務への積極的なアサインなど「機会創出」、そして最も重要なのが「IT人材自身の頑張り」にあると三木氏は締めくくった。

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