真の実力を引き出す仮想化構築・運用術とは?リポート 仮想化構築・運用イベント(2/4 ページ)

» 2010年08月23日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

サーバ仮想化技術を活用した今までにないバックアップ製品

 ベンダによるセッションでは、まずノベル株式会社 営業本部 SEグループ マネジャーの鈴木広紀氏が登壇し、同社が提供するさまざまな仮想化ソリューションの中からアプライアンス製品「PlateSpin Forge」を取り上げて紹介を行った。

ノベル 営業本部 SEグループ マネジャー 鈴木広紀氏 ノベル 営業本部 SEグループ マネジャー鈴木広紀氏

 PlateSpin Forgeは、サーバ仮想化技術を応用してデータバックアップやHA環境の構築、仮想化環境への移行、テスト環境の構築などを容易かつ効率的に行うことを目的に開発されたアプライアンス製品。そのアーキテクチャは一般的なIAサーバがベースになっており、VMware ESX3.5がプリインストールされている。データバックアップを行う場合には、バックアップ対象サーバと同じ環境の仮想マシンを内部に生成し、OSも含めたソフトウェア環境をその仮想マシンに丸ごと取り込んでコピーする。

 万一のフェイルオーバーの際は、この仮想マシンをPlateSpin Forge上で起動するだけで済み、またリストアも仮想マシンのイメージをそのまま丸ごと物理サーバに戻すだけで完了する。そのため、非常にシンプルな手順でバックアップとリストアが可能になる。また同製品を導入するための作業も、IPアドレスやパスワードなど、幾つかの情報を設定するだけで簡単に済むという。

 「どれだけ簡単に早く導入できるか、デモで実際にやってみせることがあるが、大体40分間ぐらいですべての導入作業が完了する」(鈴木氏)

 また、バックアップイメージのリストア先に、バックアップ元のサーバだけでなく、異なるベンダ製のサーバや任意の仮想マシンを選択できるのも大きな特徴である。そのため、サーバ環境を別の環境に移行する場合や、あるいは仮想化環境に移行する際の移行ツールとしても大いに役立つという。

 同製品のこうした特徴を生かすことにより、これまで高い初期導入コストがネックとなりなかなか仮想化を導入できなかったユーザーも、比較的低コストで仮想化環境を構築できるようになるという。特に、仮想化には付き物ともいえるHA環境を低コストで構築できる点や、バックアップ・リストア手順を大幅に簡略化できる点でコストメリットが大きいという。

 鈴木氏は、同製品を導入して仮想化技術を活用することによるビジネス上のメリットについて、次のように説明した。

 「物理環境と仮想環境の間の境目や、ベンダ間の境目をなくし、ビジネスのニーズに応じて任意のタイミングで任意の場所に柔軟にITリソースを配置できるようになる。これにより、どんどん変化していくビジネスに対して迅速に追従できるシステムが構築できるようになる」

仮想化をスムーズに導入・活用するための3つのハードル

 2番目のセッションでは、株式会社日立製作所(以下、日立) ソフトウェア事業部 クラウド・コンピューティング推進室長の稲葉淳二氏から、同社が提唱する仮想化環境構築・運用のメソドロジーと、それを実現するための具体的になソリューションについて紹介が行われた。

日立製作所 ソフトウェア事業部 クラウド・コンピューティング推進室長 稲葉淳二氏 日立製作所 ソフトウェア事業部 クラウド・コンピューティング推進室長 稲葉淳二氏

 稲葉氏はまず、クラウドコンピューティングが注目を集める昨今、消費者のユーザー体験は大きく変わりつつあると指摘する。

 「ユーザーはITシステム側の都合を意識することなく、やりたいことに集中できるようになってきた。これは『クラウド的ユーザー体験』とでも呼ぶべきもので、しかもそれが今では常識化しつつある。これは企業にとっては新しい機会であると同時に、こうしたユーザー体験を提供できない企業は競争上不利になるという意味では脅威にもなり得る」

 では、クラウド的ユーザー体験を実現するには、何が必要になってくるのか? 技術的要件について言えば、仮想化技術でITリソースの集約、抽象化、再分割を行うことが大前提となる。しかしそのためには、仮想化ソフトウェアを導入するだけでは不十分で、それ以外にも幾つかのハードルをクリアする必要がある。

 1つ目のハードルは、仮想化環境へいかにスムーズに移行できるかという点だ。稲葉氏は、「的確な移行計画を作成できるかどうか。これが、仮想化環境へのスムーズな移行のための最初のハードルだ」と述べる。また、移行計画を作成するためには、まずはシステムの現状での稼働状況を把握する必要があるが、そのためには日立が提供する統合運用管理ツール「JP1」のエージェントレス監視機能が有効だという。

 また、同氏は2つ目の課題として、業務サーバをいかに迅速に構築・配備できるかという点を挙げる。仮想化環境では、新たなサーバ環境を構築するためにいちいち物理サーバを手配したり設置・設定する必要がなくなるものの、仮想マシン上のOSやアプリケーションの環境設定は、現状では1台ずつ手動で行われることがほとんどだ。この点に関しては、同社のアプリケーションサーバ製品「Cosminexus」を使えば、自動的に一括して仮想サーバの環境を構築できるため、迅速かつ安全に作業を行うことができるという。

 同氏は最後に3つ目の課題として、仮想化の導入で複雑化する運用管理をいかに効率化できるかという点を挙げた。仮想化環境では、アプリケーションが稼働する仮想マシンと物理サーバの関係が1対1で対応しておらず、しかも動的に仮想マシンの数が増減したり稼働場所が移動したりする。そのため障害対応や、システム性能を維持するためのITリソースの配分作業が複雑になってしまう。稲葉氏は、これらの作業をいかに効率化できるかが仮想化を活用するための重要なポイントだと述べ、そのためにはJP1やCosminexusなどのツールを活用することが極めて有効であると強調した。

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