リリース管理に不可欠なテストとリハーサルシステム管理入門(5)(2/2 ページ)

» 2010年09月09日 12時00分 公開
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リリース・ユニットを明確に定義

 最後に、リリースにかかわる重要な考え方を2つ紹介しておきましょう。

 1つは、「リリース・ユニット」という考え方です。これは「同時にリリースする予定のハードウェアやソフトウェアなどのひとかたまり」を指します。一般に、これ以上分けることができないリリースの単位を指します。リリース・ユニットを明確に定義したうえで、どのタイミングでどのリリース・ユニットをリリースするかを考えることが重要です。

 例えば、Windows 2000 Server上で動作するサーバアプリケーションを、最新バージョンにアップグレードする変更計画があったとします。調査の結果、最新バージョンは Windows Server 2003やWindows Server 2008などのOSでないと動作せず、そのためにはハードウェアの交換が必要であると結論付けられたと仮定します。

 この場合、

Windows Server 2008 が動作するハードウェア
Windows Server 2008
目的のサーバアプリケーション

は、ひとかたまりのリリース・ユニットであると考えます。

 リリースする際は、このリリース・ユニットを明確に定義し、どのタイミングでどのリリース・ユニットをリリースするのがよいか、事業への影響やコスト、リソース、利用者のトレーニングの必要性などを考慮したうえで決定していきます。場合によっては、複数のリリース・ユニットをまとめて一度にリリースする方が都合が良いという場合もあるでしょう。

 もう1つ重要な考え方は、本番環境にリリースしたすべてのソフトウェアのインストールキット、リリースの手順書、ソフトウェアのマニュアルなどを1カ所に集めて保管しておくことです。本番環境にリリースしているすべてのソフトウェアのオリジナルコピーを保管している書庫のことを、ITIL v2ではDSL(Definitive Software Library:確定版ソフトウェアの保管庫)、ITIL v3では DML(Definitive Media Library:確定版メディアライブラリ)と呼んでいます。

 DSLやDMLは物理的な倉庫かもしれませんし、ストレージの一部かもしれません。いずれにしても、本番環境に存在しているすべてのソフトウェアのオリジナルをどこか1カ所に保管しておくことが望まれます。ハードウェアの交換などでソフトウェアの再インストールが発生した場合でも、DSL(DML)を参照すればそこにすべてのキットと手順書、マニュアルが存在しているので迅速に対応できるのです。

 DSL(DML)には、廃棄されたアプリケーションもある程度の期間保管しておくことをお勧めします。もちろんバージョン管理は欠かせません。「そのアプリケーションが使われなくなってから5年経つと廃棄する」というようなルールを設定することも重要です。ただ、ソフトウェアを使用するという観点でのライフサイクルと、そのソフトウェアのインストールキットを保管するというライフサイクルは区別して考えておいた方が無難です(ライセンス違反をしてはいけませんが)。

 次回は「障害監視と障害対策」をテーマに話を進めていきます。

著者紹介

▼著者名 谷 誠之(たに ともゆき)

テクノファイブ株式会社 阪神支社 ラーニング・コンシュエルジュ。IT技術教育(運用系/開発系)、情報処理試験対策(セキュリティ、サービスマネージャ、ネットワークなど)、対人能力育成教育(コミュニケーション、プレゼンテーション、チームワーク、ロジカルシンキングなど)を専門に約20年にわたり、活動中。「講習会はエンターテイメントだ」を合言葉に、すぐ役に立つ、満足度の高い、そして講義中寝ていられない(?)講習会を提供するために日夜奮闘している。

ディジタルイクイップメント株式会社(現:日本HP)、グローバルナレッジネットワーク、ウチダスペクトラム、デフォッグなどを経由して現職。

テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。近著に『高度専門 ITサービスマネジメント』(アイテック、2009年6月)

がある。


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