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» 2010年12月22日 12時00分 UPDATE

オブジェクト指向の世界(30):SFC学習パターンを新人研修に適用する- 暗黙知と形式知 (2/3)

[河合昭男,オブジェクトデザイン研究所]

暗黙知と形式知

 「我々は語ることができるより多くのことを知ることができる」[注3]とは、マイケル・ポラニーの暗黙知の原点です。

 一般的には知識とは形式知を意味していますが、それ以外の知識も確かに存在するという主張です。例えば、われわれは人の顔を識別できますが、それを言葉で正確に表現することはできません。言葉で表現できないから知らないということにはなりません。


[注3]


 座学で学ぶ知識は、言葉で表現できる形式知です。

 これを各自で暗黙知にするのが演習です。課題を自分で考える(No.25)ための演習を通して手を動かすことで身体で覚える(No.10)と、いつしか形式知は内面化され、暗黙知が形成されてゆきます。断片的な形式知は忘れてしまいますが、それらが結合され総合化された暗黙知は忘れません。

暗黙知を共有する

 暗黙知は人によって異なります。

 今までの人生で学びとってきた知識と、今回の研修で新たに学んだ知識が結合して総合化され、各自の暗黙知は膨らんで再構築されてゆきます。グループ演習は、偶有的な出会い(No.18)で集まったメンバーの暗黙知の共有化を支援する場です。演習課題を理解し、成果物を作成する過程で、他のメンバーの思いがけない言動にはっとすることがあります。そこから新たな学びが発生します。講師が説明するより同じ受講生同士の方が、良く伝わることがあります。

 グループ演習は短い期間ですが、会社に配属されると知らないうちに企業文化に浸ってゆきます。企業文化は言葉で表現できない暗黙知の部分が大きく、外部から簡単にまねできるものではありません。

SECIモデル

 形式知と暗黙知のサイクルを通して、企業文化が熟成してゆきます。SECIモデル[注4]とは、そのサイクルを「連結化、内面化、共同化、表出化」の4つのプロセスで表現したものです。


[注4]
『知識創造企業』 (野中郁次郎=著、竹内弘高=著/東洋経済/1996)


 これらの4つのプロセスは、ちょうど研修の「座学、演習、グループ演習、発表」に対応します。座学は形式知を吸収し、各自の持っている形式知と連結化して理解する場です。演習は自分の頭で考え、手を動かして体で覚え、暗黙知として内面化する場です。グループ演習は各自の暗黙知を共同化する場です。

 成果物を作成して発表を行うことは、各自が共有できた暗黙知の表出化です。ここで座学で学んだ形式知以上の何かが出てくることが、創発と呼ばれる知識創造です。SECIモデルに研修プロセスを当てはめると、図3のようにきれいに当てはまります。

 このSECIモデルのサイクルは、受講生が会社に戻って配属された後も、ずっと継続するものです。長い時間をかけて個人と組織の知識が共に膨らんでゆき、企業文化が熟成されてゆきます。

ALT 図3. 研修プロセスとSECIモデル

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