ビジネスアナリストも基礎能力が大事BABOK 2.0を読んでみよう(6)(2/3 ページ)

» 2011年01月18日 12時00分 公開
[辻 大輔, 後藤 章一,豆蔵]

「基礎コンピテンシ」をどのように活用すればよいか

 ある程度の社会経験を積んだ方であればお気付きでしょうが、「基礎コンピテンシ」は、大抵の仕事(特にプロジェクトやチームで仕事)をする上で必要な能力ばかりです。

 それぞれが広範囲に及び、奥も深く、一つ一つが一冊の書籍になるようなテーマばかりです。どんな仕事にも当てはまるだけに、抽象度が高く、具体的にどのように活用していけば良いかピンとこない方もいるでしょう。

 ここでは「基礎コンピテンシ」で記述されている内容を実際の活動や置かれている状況と結び付け、具体性を持たせて活用する一つのアプローチをご紹介します。

 「基礎コンピテンシ」知識エリアの記述は、これまで紹介した知識エリアのようにタスクやテクニックを扱っているのでなく、コンピテンシごとに「目的」「定義」「有効性の評価基準」といった構成となっています。

ALT 図4:コンピテンシの記述構成

 問題解決のコンピテンシを例にとって説明すると、「1.目的」には、問題解決能力を身に付け、ビジネスアナリシスの活動にどう生かすのか、という目的が記述されています。

 「2.定義」には、問題解決とは、どういうことができる能力を指しているのかという本質的な定義が記述されています。

 「3.有効性の評価基準」には、問題解決能力がうまく発揮されていることを示す評価基準が箇条書きで列挙されています。

 「目的」や「定義」ももちろん重要ですが、ここでは、特に「有効性の評価基準」に注目します。評価基準には、“問題解決がうまくいっているとどのような状態になっているか”が端的に示されています。

 例えば、「問題解決のプロセスに関わる人々が、選択されたソリューションは正しいと自信を持っていること」という状態が記述されています。ここから、自分の活動や状況と照らして、『これは一体どういう状態になっていれば良いのか?』や『その状態に持っていくにはどのような事をしなくてはならないのか?』ということを自分や周囲のメンバーに分かる言葉で具体化します。

 これは簡単な作業ではなく、一番脳みそに汗をかくべき場所です。

 これができるか否かがBABOKを活用できるか、ただの読み物として終わってしまうかの分かれ目です。

 そして具体化した事項を実行し、その結果を検証し、さらに磨きをかけブラッシュアップしていきます。このサイクルを回していく中で、ときには一歩引いて「基礎コンピテンシ」知識エリアを再度読み返してみたり、さらに各コンピテンシに関連する専門書籍に当たってみたりして、実践に取り込んでいきます。

「基礎コンピテンシ」はビジネスアナリストの“基礎体力”

 「基礎コンピテンシ」知識エリアで取り扱っている広範に及ぶコンピテンシを十分に備えてからでないと、ビジネスアナリストとして活動できないのではと、まだ不安に思われている方もいるかもしれません。

 安心してください。全てのコンピテンシが100点にならないと活動ができない訳ではありません。現に筆者らも全てが完璧ではありませんが、ビジネスアナリシスや改善活動のコンサルティングを行っています。

 ただし、ビジネスアナリシス活動に臨むに当たって、必要とされるコンピテンシの全体像を把握しているのと、そうでないのとでは、プロジェクトの成果やメンバーの成長度合いなどの面で、大きく異なってきます。

 なぜかと言うと、全体像を知っていることで、今回のビジネスアナリシス活動で“特に重要になりそうなコンピテンシ”や、“自分の強み・弱み”を特定することが可能になるからです。活動に必要なコンピテンシと、自身のコンピテンシにギャップがあれば、自分の課題として常に意識して活動したり、複数人で取り組む場合には弱点を補えるメンバーでチームを編成したりすることができます。

 「基礎コンピテンシ」の向上は筋力トレーニングと似ていて、一朝一夕には達成できません。先に説明したようなサイクルを地道に繰り返すしか、王道はありません。楽な抜け道はないのです。

 継続するコツとしては、あまり最初から欲張らずに、直近の活動に関連するコンピテンシと中長期に取り組むコンピテンシを一つずつ選んで取り組むくらいが良いのではないでしょうか。この「基礎コンピテンシ」の知識エリアは、こういったビジネスアナリストの『基礎体力作りの地図』を示してくれていると言えるでしょう。

 以上、第2回からこれまで5回に分けて、BABOKの7つの知識エリアの概要とポイントをご紹介してきました。いかがでしたでしょうか? ビジネスアナリシスの活動のイメージをつかんでもらえたでしょうか。

 今回は最終回なので、BABOKに基づいたビジネスアナリシスの資格認定について、少し触れておきたいと思います。

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