第1回の連載でも説明しましたが、BABOKはカナダにある「IIBA(International Institute of Business Analysis)」という団体が発行しています。
IIBAは、ビジネスアナリシスの重要性と有用性を世に広めていくことを目的としています。ビジネスアナリシスの知識を体系立てて世に出されたのがBABOKですが、同時に適性なビジネスアナリストの育成や業界への認知向上などを目指し、資格認定(CCBA/CBAP)にも力を入れています。
現時点では、ビジネスアナリストのレベルに応じて2つの資格が設定されています。
表1:ビジネスアナリシスの資格認定 | ||||||||||||
|
||||||||||||
CCBA:Certification of Competency in Business Analysis CBAP:Certified Business Analysis Professional |
CCBAは、ビジネスアナリシスにある程度は熟達しているものの、まだスキルや専門知識を習得中で、あまり複雑ではない狭い範囲のビジネスアナリシスに取り組んでいる人を対象としています。一方、CBAPは、5年以上の十分なビジネスアナリシスの業務経験を持ち、BABOKの深い理解と専門性を持っているプロフェッショナルが取得できる資格となっています。
どちらの資格試験もBABOKに基づいた知識と実務経験が問われ、コンピュータによる回答形式を採っています。表1にある通り、現時点では、英語による上級資格(CBAP)のみが実施されており、今のところ世界で約1100名(うち日本人は2名)が認定されています。
まだまだ、日本人にはハードルの高い資格となっていますが、今後中級レベルのCCBAが日本語で実施される予定になっているので、受験者、認定者の増加とともに資格認定の認知度も上がってくると予想されます。
資格認定には、ビジネスアナリストを目指す個人にとって、キャリアパスを意識できたり、認定されることによるスキルの実証、ひいてはビジネス機会の拡大につながるメリットがあります。
また、企業組織にとっても、社外のステークホルダーに業界標準のプラクティスを使用している事をアピールできますし、社員のビジネスアナリストとしての責務をはっきりさせ、モチベーションが向上するなどの期待ができます。BABOKを業務に活用しようと考えている方や組織は、併せて資格認定も視野に入れておくと良いでしょう。
本稿では簡単に紹介しましたが、詳しくはIIBAのWebサイトをご参照ください。またCBAPに認定された日本の方の受験体験記も、Webで公開されています。
本連載は、BABOK 2.0のリリースから間もなくして開始しました。それから早1年半が経ちました。その間、日本語版も発行され(2009年12月)、世間のBABOKに対する認知度、取り組み具合も大きく拡大してきたように思います。
Webサイトや雑誌等のメディアでも頻繁に取り上げられことが多くなり、セミナーや説明会も各所で開催され盛況を博しているようです。また、システム企画や要件定義などの上流工程に危機意識を感じている各企業でも、BABOKを参考にプロジェクト改善や組織プロセス改善に着手し始めています。
われわれに寄せられる問い合わせも、これまでは「BABOKって何ですか?」や「本当に使えるんですか?」といったケースが多かったのですが、ここ半年くらいで、「BABOKを活用して上流工程プロセスの整理を考えている」や「現状の進め方にBABOKのタスクを取り込みたい」といった具体的な依頼が増えてきたと実感しています。
こういった状況を踏まえても、今後ますます超上流工程と言われるようなシステム構想、システム企画に注目が集まり、ビジネスアナリシス活動をリードできる人材の要請が高まってくるでしょう。
そのようなケースで役立つ知識を集約したBABOKは、今後その重要性を益々高めていくことでしょう。本連載が皆さまの「BABOKを読んでみよう! 活用してみよう!」と思われるきっかけとなったのあれば幸いです。
ご愛読ありがとうございました。
辻 大輔(つじ だいすけ)
株式会社豆蔵
ソフトウェアベンダ数社でソフトウェア開発やSPI活動などに携わった後、2008年より株式会社豆蔵に在籍。現在はコンサルタントとして、ソフトウェア開発プロセスのアセスメントや展開支援に従事している。
後藤 章一(ごとう しょういち)
株式会社豆蔵
数社にてソフトウェア開発業務、技術調査業務、技術講師業務などを経て、現在は主にプロセス改善や標準化に関するコンサルティングを担当。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.