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» 2011年02月17日 12時00分 UPDATE

IT担当者のための業務知識講座(5):物流業の命は、「輸送」よりも「情報活用」にあり (1/2)

「物流業」と言うと、単に「物を運ぶ仕事」と考えてしまいがちだが、決してそうではない。彼らにとって最大の命題とは、ただ「運ぶ」ことではなく、「どう運ぶか」にあるのだ。

[杉浦司,@IT]

物流業とは「距離と時間の壁を管理する」業務

 前回は製造業を紹介しましたが、今回は工場から企業/家庭に製品を届けたり、回収したりする物流業を紹介します。

 「物流」とは「物的流通」の略であり、「物流業」とは文字通り“物を運ぶことを業とする企業”のことを指します。物流と言えば、歴史的には江戸時代の飛脚や菱垣廻船、樽廻船が有名ですが、昔から産業発展を支える上で重要な役割を果たして来ました。ただし、こう述べると、物流業者=輸送業者と考えてしまいがちですが、ここには倉庫業者も含まれています。というのは、輸送には必ず倉庫が必要となるためです。

 例えば、もし物流業者が輸送機能しか持っていなかったら、送り先の荷物置き場がいっぱいであるなど、何らかの事情によって荷物の受け入れができない場合、荷物を届けることができなくなってしまいます。また、そもそも送り先側の営業時間や業務プロセス上の事情により、荷物の受け入れ時間を指定される場合もあります。通関手続きが必要となる輸入品の場合、全ての荷物の手続きが終わるまで、一時的に通関の近くで保管する場所も必要となります。

 よって、輸送業務にとって倉庫は不可欠となるため、自社で倉庫を持っている物流業者もあれば、専門の倉庫業者に業務を委託している会社もあるのです。これを換言すれば、物流業者には「輸送時間の調整」という機能も求められていることになります。

 そこで、物流業という業態の本質を一言でまとめるとすれば、「空間的および時間的な物の移動を担う業態」と言うことができます。

物流業にとっての顧客は「地球上の全人類」

 では次に物流業の存在意義についてですが、これは単純な話です。物流業者がいなければ、送り主と送り先のどちらかが自分で物を運ばなければならないことになり、非常に非効率であるためです。例えばメーカーなら製造・販売業務など、自社の本業に専念できなくなってしまいます。運ぶという仕事は決して華やかなものではありませんし、あって当たり前のようにも思われがちですが、企業が自社業務に集中できるのも、物流を専門とする事業者が存在しているお陰なのです。

 また、全ての企業が自社で荷物を送る/引き取ることには、環境面から見ても問題があります。例えば、荷物の輸送先が同じでも、各社がトラックや鉄道などの輸送手段を個別に使っていたらどうでしょう。コスト的にも無駄が多いほか、それだけ多くのCO2を撒き散らすことになります。

 では、物流業者の存在意義をそのように考えると、“物流業者の顧客”とは誰になるのでしょうか? これには以上のことから、2種類の顧客がいるとまとめることができます。1つは「送り主」や「送り先」の一般企業。そしてもう1つは「一般消費者」です。これは、直接的な取り引きはなくても、一般消費者が日常生活を送っている“環境”に影響を与えているためです。

 事実、物流業界では、多くの企業がCSR(企業の社会的責任)の一環として、「ISO14001環境マネジメントシステム」の認証を取得しています。これも環境保護への取り組みが他の業界以上に求められているとともに、「現代社会において、環境負荷低減を考えない物流業者は社会的な非難を浴びることになる」ということを自覚しているからなのです。

 ではここで、物流業の「本質」と「存在意義」、またその「顧客」を基に、その使命をまとめておきましょう。

 物流業における組織の使命とは、「送り主、送り先との間にある“空間的および時間的な隔たり”を埋めるサービスを提供する」ことと、「物流の効率化により環境を保護する」こと

 いかかでしょうか。すなわち、物流業とは単純に「物を運ぶ」だけの業態ではなく、送り先や送り主にとっての利便性を確保しながら、環境負荷低減も心掛けるなど、多方面へのさまざまな配慮・工夫が求められる業態と言えるのです。

全てにおいて「効率」が求められる物流業務

 では次に、物流業のアウトラインを詳しく見て行きましょう。物流業務には、大きく分けて輸送、保管、荷役、流通加工、梱包・包装、情報という6つの機能があります。以下では、それぞれのポイントだけ簡単に説明しましょう。

■輸送

トラックや鉄道、飛行機などの輸送手段を使って、物を移動させる業務です。輸送効率向上、環境負荷低減のためには、輸送する距離に応じて、最も燃料効率が良く、CO2排出量が少ない手段を選ぶ必要があります。その意味で、一般には遠距離輸送なら鉄道や飛行機、中/短距離ならトラック、さらに短距離になるとバイクや自転車、リヤカーなどが適しているとされています。

 このうちトラックについては、運転手のモラルや技量がコスト効率/環境負荷低減に大きく影響します。そこで、無駄な加減速をしないよう配慮させたり、デジタルタコグラフと呼ぶ機器を車両に取り付けて運転状況を詳細に記録したり、アイドリングストップを義務付けたりと、多くの企業があらゆる施策を行っています。一方で、入念な配送計画を立案し、輸送回数を極力抑えることも、効率的な輸送を実現するための大きなポイントとなります。

■保管

荷物を一時的に倉庫に保管しておく業務です。前述のように、多くの場合、送り先・送り主企業の業務事情に合わせて、届ける時期/時間を調整することが必要となります。例えば、シーズン前に製造されたエアコンやヒーターなどを、小売店の販売スケジュールに合わせて届ける、といった納期調整です。また、荷物が食品や貴重品などの場合は、冷凍保存機能や厳重なセキュリティ体制なども求められます。つまり、“扱う荷物に合わせた保管機能”を確保することも重要なポイントとなるのです。

■荷役(にやく)

荷役とは、荷物の積み込みや荷下ろし、倉庫への入出庫といった役務(労働)のことです。輸出入品の通関手続きを代行する業務もここに含まれます。また、今回は主にBtoBにフォーカスして説明していますが、BtoCでは宅配業における「代引きサービス」も荷役に当たります。

■流通加工

送り主からの依頼を受けて、配送センターや倉庫において、商品への値札付けや宛名ラベル貼り、半完成品の最終組み立て、商品のセット組みなどを行います。もちろん、この流通加工も一連の輸送プロセスの中に組み込まれているため、指定の日時に輸送できるよう、常に効率が求められます。そこで、加工業務の比率が増えている配送センターや倉庫では、加工作業のオートメーション機器を取り入れるなど、工場化している例も多く見られます。

■梱包・包装

荷物を梱包材や包装材で保護することによって、輸送中の衝撃から守るための作業です。精密機械や割れ物、衣類など、荷物に応じた梱包材を使いますが、近年は環境負荷低減のために、リサイクルできる素材の梱包材を採用したり、「通い箱」と呼ばれる繰り返し使える入れ物を用意したりするなど、極力、輸送廃材が出ない工夫をしています。

■情報

「輸送中の荷物がいまどこにあるのか」を確認したり、輸送経路や輸送中の温度・湿度などの輸送状況を正確に記録したりすることで、輸送のトレーサビリティを担保します。送り主・送り先は、この情報で「計画通りに運ばれている」ことを確認したり、より効率的な輸送経路を策定する際の参考にしたりします。

 一方で、こうした「情報」には「物流会社の業務品質を裏付けるもの」という側面もあります。特に食品など、鮮度や品質維持が求められる荷物については、トレーサビリティが輸送品質を証明するデータとして非常に重要な意義を持っています。いわば「情報」が、物流の効率、品質を支えているだけではなく、送り主と送り先、また物流会社間の信頼関係を担保するための要ともなっているのです。

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