“快適な操作性”を守る監視ツール選び、7つのポイントビジネス視点の運用管理(4)(2/2 ページ)

» 2011年05月26日 12時00分 公開
[福田 慎(日本コンピュウェア ),@IT]
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ユーザー体感向上のために「何を監視すべきか」を見極めよう

 引き続き、ツール選択のポイントをご紹介します。

エンドユーザーが気付く前に障害を検知する必要があるか?

 エンドユーザー体感監視を導入するからには、誰もが「より早く障害を検知したい」と考えるはずです。

 その点、パケットキャプチャ方式は実ユーザーのパケットを待っているだけなので、もしシステムに何らかの障害が起こっていても、ユーザーのアクセスがなければそれを検知することができません。例えば、監視対象がイントラネットで、「夜間は誰もアクセスしないようなサイト」の場合、夜間に何らかの障害が発生しても、次の日の朝、最初にアクセスした従業員が障害に遭遇するまで、その問題を検知することはできません。

 一方、仮想ユーザー方式は自ら定期的なアクセスを行うので、必ず障害を検知することができます。その意味で、「障害のより早い検知」という点では仮想ユーザー方式の方が優れていると言えます。

 ただし、仮想ユーザー方式は「一定間隔での監視のため、検知までに時間が掛かる可能性があること」と、「全てのページを監視しているわけではない(あらかじめ定義しておいたページしか監視しない)ため、特定のページの障害は検知できない可能性があること」には注意が必要です。

どこから計測したいのか?

 仮想ユーザー方式の場合、「計測を実行するエージェントをどこに置くか」が重要なポイントとなります(パケットキャプチャ方式では、基本的に全ユーザーのレスポンスタイムを計測するので、この点は考慮する必要がありません)。

 監視対象システムは従業員がアクセスするイントラネットなのか。それとも一般消費者向けに商品を販売するような、いわゆるBtoCサイトなのか――イントラネットであれば、従業員がいる全ての(あるいは主要な)拠点にエージェントを配置することになるでしょう。BtoCサイトの場合は、「ユーザーがいる全ての場所」にエージェントを置くことはできないため、例えば「データセンター内にのみエージェントを置く」といった形になります。ツールを選ぶ際はこの点に着目して、その価格やスペックを吟味する必要があります。

 なお、「データセンター内にエージェントを置く」場合、計測結果はWANなどの影響を受けない、対象システムの「純粋なレスポンスタイム」となります。よって、この計測結果はサービスレベル管理の指標とすることもできます。

CDNなど外部サービスの計測は必要か?

 最近は1つのWebサイトを構成するのに自社のシステムだけではなく、外部のサービスも利用するケースが多く見られるようになりました。CDN(Contents Delivery Network)やストリーミングサービスがその代表例ですが、SaaSなどのクラウドサービスも一種の外部サービスと言えるでしょう。

 これらのサービスは、より良いパフォーマンスを得るために利用するものですが、いつでも一定の効果が得られるわけではありません。実際、いくつかのサイトで自社のサーバのレスポンスよりもCDNのレスポンスの方が悪いという現象が発生しています。つまり、こうした外部サービスを重要なシステムで利用している場合も、その効果を正確に把握する上で、エンドユーザー体感監視は重要な意義を持つことになるのです(詳しくは第3回「クラウド時代こそ、エンドユーザーの観点が不可欠」を参照)。

 ただ、パケットキャプチャ方式ではその監視の仕組み上、「エンドユーザーが外部サービスからどれくらいのパフォーマンスを受けているか」を知ることはできません。必然的に、仮想ユーザー方式を選択することになります。

携帯電話対応サイトを監視する必要はあるか?

 近年、携帯電話を対象にしたBtoCサイトが増え、その重要性が増すに連れて、「携帯電話対応サイトのパフォーマンス監視」のニーズも高まっています。しかしひと口に「携帯電話対応サイトの監視」と言っても、携帯サイトの技術は携帯電話会社ごとに異なります。また、その監視形態も通常のWebサイトのように典型的な形態があるわけではなく、監視ツールベンダ、監視サービスプロバイダごとに異なっています。それらを総称して「携帯サイト監視」と称しているのです。

 比較的多いのは、「仮想ユーザー方式を使い、インターネットを介して携帯サイトにアクセスして、そのパフォーマンスを計測する」方法です。

ALT 図3 携帯電話対応サイトのパフォーマンス分析の仕組み。無線も含めた監視が必要なら、そのことを明確に認識した上で、適切なツール・サービスを選ぶ必要がある

 この場合、携帯電話対応サイトを提供する側も利用する側も、通常のWebサイト監視の延長として容易に始められますが、あくまで「インターネットを介した擬似的な監視」であることに注意する必要があります。つまり、携帯電話の通信で最も重要な無線部分の監視はできないのです。

 さらに最近はAndroid、iPhoneなどの「世界標準」携帯、日本独自の携帯(いわゆるガラパゴス携帯)などさまざまな機種が入り乱れており、それぞれに異なった監視手法が必要になることもあります。従って、「どのような携帯を、どのように監視したいのか」また「無線部分まで含めて監視したいのか」など十分に整理した上で、そのニーズに最適な製品やサービスを選ぶ必要があります。


 さて、今回はエンドユーザー体感監視を始めるにあたって考慮しなければならない7つのポイントを紹介しました。これらが明確になっていれば、ツール選びも比較的スムーズに進むでしょう。ただし、実際に効果的なエンドユーザー体感監視を始めるためには、まだいくつか気を付けなければならない点があります。次回、引き続きそれらの点についてご説明します。

著者紹介

▼著者名 福田 慎(ふくた しん)

日本コンピュウェア 営業本部 シニアソリューションアーキテクト。長年に渡り、ITサービス管理の分野に従事。 BMCソフトウェアや日本ヒューレット・パッカードなど、米国リーディングカンパニーの日本法人にて、プリセールスとして数多くの案件に携わり、IT部門が抱える課題解決を支援。現在は日本コンピュウェアにて、シニアソリューションアーキテクトとして顧客企業への提案を推進する傍ら、講演活動にも積極的に取り組み、アプリケーションパフォーマンス管理の啓発活動を展開している。


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