以上が現在のスマートフォンと、80年代のPCとの類似点となる。では次に、相違点を整理してみよう。
80年代のPC導入は企業中心に行われた。IBM5550がその典型であり、オンラインターミナル(3270キャラクター業務端末の代替)、日本語ワープロ、MS-DOS PCの1台3役を企業内で果たすことをセールスポイントとして販売された。
個人のPC購入が本格化したのは、Windows 95が発売され、インターネットの商用利用が一般化した95年以降だった。
一方、スマートフォンは個人利用が先行しており、企業への導入はこれからという状況にある。例えば以上の図3のような調査結果もある。
80年代PC導入は、IBM3270キャラクター業務端末としてIBM5550が導入されたように、オンライン・キャラクター業務端末の代替として導入されたものが大半であった。PCとしての活用はワープロソフト、表計算ソフトなどが使われていた程度に留まっていた。
一方、スマートフォンは企業で導入される場合であっても、操作性が機種選定のポイントの一番に挙げられており、操作性・ユーザーインタフェイスの良さがスマートフォン活用で最重要視されている(図4参照)。
インターネット商用利用の一般化が95年以降であったため、80年代のPCはあくまで社内ホストコンピュータへキャラクター業務端末として接続された。これに対して、スマートフォンは屋内外を問わず、インターネットへ接続、活用されることが前提になっている。
「スマートフォンは小型PCと同じだ」と言われることが多いが、PCにはない独自の機能もある。例えば、PCにはないGPS機能を使えば、スマートフォンを持っている人の現在地に合わせた情報提供を行うことができるし、音声機能を使えば、メモを音声で残したり、音声で情報検索したりすることも可能である。スマートフォンは、単なるPCの代替と考えない方が良い。
その背景も含めて比較してみることで、スマートフォンの特徴をあらためて理解できたのではないだろうか。次回は、今回整理した類似点、相違点から類推する「企業におけるスマートフォン活用」について述べることにする。徐々に具体的な内容に踏み込んでいくので、ご期待いただきたい。
参考文献
『スマートフォンの市場規模の推移・予測』(MM総研/2010年12月18日)
『スマートフォンのビジネス利用、4割の企業が前向き』(COMPUTERWORLD 「Deep Dive」/2011年2月28日」)
井上 実(いのうえ みのる))
MBA、中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。 著書:『システムアナリスト合格対策』(共著、経林書房)、『システムアナリスト過去問題&分析』(共著、経林書房)、『情報処理技術者用語辞典』(共著、日経BP社)、『ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜』(共著、同友館)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.