スマホはマーケティングを変える企業のためのスマホ徹底“活用”術(3)(2/2 ページ)

» 2011年09月16日 12時00分 公開
[井上実,M&Iコンサルティング]
前のページへ 1|2       

必要な時に必要な場所に必要な情報を届ける

 必要な時に必要な場所に必要な情報を届けるサービスとしては、ワタミグループの「ワタミアプリ」が挙げられる。

 「ワタミアプリ」は、時限クーポンが特徴である(図4参照)。スマートフォンのアプリ(iPhoneに対応)を起動すると、メニュー画面が表示される。その中から「お店・クーポン検索」を選択すると、GPS機能を使用し、現在地近くのワタミグループのお店の一覧が地図上に表示される。その中から、これから行こうと思うお店を選択すると有効なクーポンの内容や条件、お店の情報などが表示される。

ALT 図4 GPS機能を使用し、現在地近くのワタミグループのお店の一覧が地図上に表示される。その中から、これから行こうと思うお店を選択すると有効なクーポンの内容や条件、お店の情報などが表示される。さらに、一種のタイムセールである「時限クーポン」も任意に配信することで、来客数が少ない時間帯の集客促進も行っている(クリックで拡大)(時限クーポンサイト「イマナラ!」のWebサイトより)

 クーポンの中には、「時限クーポン」と呼ばれる有効時間が指定されているものがある。時限クーポンはスーパーマーケットなどで行われるタイムセールと同様のもの。お店がひまな時間帯に時限クーポンを発行し集客を促進するのが狙い。店頭や路上で紙のクーポン券を配布すると時間を制限したクーポンは配布しにくく、繁忙時間帯に使用されると、店側としては利益を損なう可能性が出てくる。これに対して、GPS機能を活用した時限クーポンは、いま(Time)、店の近くにいる(Place)、来店意思のある(Occasion)顧客に、有効な情報を確実に渡すことができる。

 クーポンはダウンロードしたうえで、該当店舗で使用することができる。また、クーポンを顧客側からリクエストすることも可能であり、該当店舗がリクエストに合わせて時限クーポンを発行することもできる(図5参照)。

ALT 図5 クーポンはダウンロードした上で該当店舗で使用する。また、クーポンを顧客側からリクエストすることも可能で、該当店舗がリクエストに合わせて時限クーポンを発行することもできる(クリックで拡大)(時限クーポンサイト「イマナラ!」のWebサイトより)

 GPS機能は屋内だと使用しにくい面があるが、これを解消するためにWiFiを使用して場所を特定する方法が開発されている。国際航業が2011年2月8〜11日に、横浜みなとみらい「クイーンズスクエア横浜」で日本情報処理開発協会とともに、この技術を使いスマートフォンを活用した館内案内サービス実証実験を行っている。これ以外にも、相田みつを美術館やショッピングモール「三井アウトレットパーク 仙台港」で実施した事例がある。

 館内案内に顧客情報を結び付けたカスタマイズしたサービス・情報提供を行えば、スマートフォンを活用したコンシェルジュサービスを構築することも可能だ。

 また、トラックやバスなどの運行状況の把握や、現在地を明確に伝えることができない顧客へのタクシー配車サービス、ピザの配達サービス、店頭・路上マーケティングへの活用なども、GPS機能を生かしたスマートフォン活用候補として挙げられる。GPSによる場所の特定が難しい屋内の場合でも、WiFiを使用すれば位置情報を取得できる。

ソーシャルメディア/フラッシュ マーケティングとの相性も抜群

 携帯性が高く、常に身に着けているスマートフォンは、新たなマーケティング手法として注目されているソーシャルメディアマーケティングやフラッシュマーケティングとも相性が良い。

 ソーシャルメディアマーケティングとは、mixi、TwitterやFacebookなどのSNSを活用し、クチコミを狙ったマーケティング手法。SNSにおける「つぶやき」は、リアルタイム性が重要であり、すぐその場で書き込まなければ意味がない。まさに携帯性の高いスマートフォン向けアプリと言える。

 必要な場所で必要な時に得た情報を、ひとりじめせずにSNSでつぶやけば、同時(Time)に同じような場所(Place)で同じような機会(Occasion)にある人にとっても有益な情報となる。企業にとっては、期待した以上の情報の広がりを即座に実現できる。

 Facebookとの連携事例としては、2011年6月から国内のコンビニや外食、衣料など大手チェーン十数社が参加し始まったクーポン配信サービスが挙げられる。FacebookからGPSを使用したスポット機能で現在地周辺の店を検索し、割引クーポンを得ることができる。さらにFacebook上の友人同士でクーポン情報を共有でき、1人がクーポンを利用すると、友人のページにも表示される。利用者同士がクーポンにコメントを付け合えば利用がさらに促進され、サービスを提供する店舗にとって顧客獲得につながる。

 また、時間制限がなされているフラッシュマーケティングにも、スマートフォンは相性が良い。フラッシュマーケティングとは、割引価格で購入できるクーポンを時間限定でインターネット販売するもの。最低販売数に満たないとクーポンは発行されず、予定販売数を超えると売り切れになる。そのため、購入希望者は、できるだけ早く購入申し込みを行う必要がある。ここでも、携帯性の高いスマートフォンが有利となる。

 家に帰ってPCから申し込んでいたら、売り切れになる可能性が高いからだ。ほしいと思ったときに、すぐに申し込みができるスマートフォンが威力を発揮する。フラッシュマーケティングとしてはグルーポン・ジャパンの共同購入型クーポンサイト「グルーポン」や、リクルートの割引チケット購入サイト「ポンパレ」などがある。

参考リンク
共同購入型クーポンサイト「グルーポン」(グルーポン・ジャパン)
割引チケット購入サイト「ポンパレ」(リクルート)


 携帯性が高く、場所の特定も可能なスマートフォンは、今後も新たなマーケティングデバイスとして、さまざまな活用方法が考えられていくものと思われる。

参考文献
『スマートフォンのビジネス利用、4割の企業が前向き』(COMPUTERWORLD 「Deep Dive」/2011年2月28日」)

筆者プロフィール

井上 実(いのうえ みのる))

M&I コンサルティング代表・コンサルタント

MBA、中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。 著書:『システムアナリスト合格対策』(共著、経林書房)、『システムアナリスト過去問題&分析』(共著、経林書房)、『情報処理技術者用語辞典』(共著、日経BP社)、『ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜』(共著、同友館)。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ