現場調査の成功は、実施日の選択次第クラウド時代の業務分析バイブル(4)(2/2 ページ)

» 2011年10月11日 12時00分 公開
[西村泰洋,富士通]
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調査時期の確定

 以上で適切な調査時期の決定法は理解できたと思います。しかし分析の結果、例えば5月第2週の木曜日、金曜日が1年間を通じて最も適切な時期と分かったにもかかわらず、現在が6月だったら「来年の5月まで待たなければいけないのか?」ということになるのでしょうか?

 そこで、そのようなことがないように、月であれば複数の月を想定しておく必要があります。例えば、業務量が標準的だと考えた5月と、比較的近い値を示す9月を候補とし、両月を比較して9月の方が少し忙しい程度であれば、この「少しの差」をクリアできる考え方、計算式を組んで、調査結果を是正することを考えます。こうして妥協点を見出すのです。

 ではここで、調査日を絞り込むロジックの例をまとめておきましょう。以下の図3のようなイメージで、1年の中で最適な月 →月の中で最適な週→最適な曜日→最適な日と絞り込んでいきます。

ALT 図3 調査日を絞り込むロジック。平均的な業務量、典型的な業務内容を基準に、最も標準的な調査日を絞り込んでいく。その際には「業務の最小サイクル」も考慮に入れると、信頼性・実効性ある調査結果が得られる

プロフェッショナルとして

 ただ、ここで少しリアルな話も紹介しておきましょう。以上のように、信頼性ある現場調査を行うために業務分析をし、最も標準的な日を念頭において現場調査の実施日を決めるわけですが、以上のことは業務の繁忙・標準・閑散時期やサイクルの分析をしていることにもなります。そして、ユーザー企業・ユーザー部門は、そうしたデータを分析していることから、現場調査にある希望を寄せます。それは「繁忙期の現場を調査してほしい」というものです。「なぜ忙しいのか、その理由を見える化したい」というわけです。

 筆者の経験から言えば、こうしたニーズを寄せられたときこそ、繁忙日より、まずは標準日を調査日とすることをおすすめします。それは「標準(または典型)が、これだけの量で、こういう業務内容だった」という情報を把握して初めて、「繁忙期の業務量がこれだけ増える、業務内容(種類)がこれだけ増える」という差分を明確化できるからです。

 そう、勘の良い方はすでに分かっていたかと思いますが、現場調査は標準日と繁忙日(または閑散日)がセットになってこそ、より説得力のある結果が得られるのです。標準日を業務分析から見出すことも簡単なことではありませんが、プロフェッショナルらしさを発揮するのは、さらに繁忙日も割り出し、セットで現場調査を行うことなのです。

 ただ、調査日の組み合わせは「標準日と繁忙日」だけではありません。「第1候補の実測日」と「バックアップとしての実測日」といったパターンもあります。さらに、最適な調査時期を確定する上では統計学を活用することもおすすめします。例えばMicrosoft Excelを使う場合、「ツール」に「分析ツール」という便利な機能がありますが、これを使って「相関分析」「回帰分析」などが簡単に行えることはご存じかと思います。これも調査日を決める上での良い参考になるはずです。


 以上のように業務分析をしっかりと行い、最適な調査時期を決定できれば、現場調査は必ずうまくいくはずです。逆に言えば、最適な調査時期を決定できなければ、現場調査は成功しないのです。次回は、いよいよその現場調査について解説します。

筆者プロフィール

西村 泰洋(にしむら やすひろ)

富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 第二FI統括部 フィールド・イノベータ ディレクタ。物流システムコンサルタント、新ビジネス企画、マーケティングを経て2004年度よりRFIDビジネスに従事。RFIDシステム導入のコンサルティングサービスを立ち上げ、数々のプロジェクトを担当する。@IT RFID+ICフォーラムでの「RFIDシステムプログラミングバイブル」「RFIDプロフェッショナル養成バイブル」、@IT情報マネジメント「エクスプレス開発バイブル」などを連載。著書に『RFID+ICタグシステム導入構築標準講座』(翔泳社/2006年11月発売)などがある。



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