仮想化、クラウド、またビッグデータというトレンドを受けて、ITシステムを実質的に支えるデータセンターの重要性がより一層増している。コストを最適化しながら、システムの安定稼働すなわちビジネスの安定的な遂行を図るためには、どのような視点でデータセンターを選べば良いのだろうか。データセンターの選定法を2回に分けて解説する。
本記事では、データセンターの選定方法について述べる。周知の通り、データセンターが「メインフレームのような大型コンピュータの置き場所」であった1950年代から1990年代初頭まで、企業は自社のコンピュータシステムを「オンプレミス(自社が管理する設備)」に保持していた。現在のように、多くの企業が商用データセンターを使うようになったのは、1990年代後半からのドットコムブーム時代からだが、本記事では、この「データセンター事業者が提供する商用サービス」を対象に話を進める。
データセンターが提供するサービスには、ハウジング(コロケーション)、ホスティング、クラウドコンピューティング(IaaS/PaaS/SaaS)がある。データセンター事業者によってサービスの呼称が異なる場合もあるが、大抵の場合、上記のいずれかに分類される。一般に、ホスティング、クラウドコンピューティングでは、ファシリティ的なサービスに加え、アプリケーション的なサービスが付加されているケースが多い。以下では、各サービス形態を個別に紹介しよう。
ハウジング(コロケーション)は、「コンピュータシステムを“一緒に(co-)”“配置(locate)”すること」を主眼としたサービスである。具体的には、企業は所有するサーバ機器を持ち込み、データセンター事業者は、サーバ機器を設置する場所、ネットワーク回線、その他付随するサービス(機器LEDの目視監視等)を提供する。機器の持ち込みが可能なため、サーバ環境(サーバ機器やOS等)の柔軟なカスタマイズが可能だが、サーバ環境の管理を自身で行う必要がある。
ホスティングは、ハウジング(コロケーション)サービスに加えて、データセンター事業者の手によってサーバ環境が管理・提供されるサービスだ。企業はサーバ環境を自身で管理する必要がない半面、選択できるハードウェアやOSに制約があることが多い。
クラウドコンピューティング(IaaS/PaaS/SaaS)は、2006年8月9日、当時、米グーグルの最高経営責任者であったエリック・シュミット氏が「Search Engine Strategies Conference」において提唱したのが始まりと言われている。
IaaS/PaaS/SaaSというサービスの概念はそれ以前から存在しており、それぞれのサービスを包括的なイメージとして捉えたものがクラウドコンピューティングと言える。
このうち、Infrastrcture as a Service (IaaS)は、ホスティングサービスに加えて、「サーバ資源(CPU、メモリ容量、ディスク・ストレージ容量等)を必要なだけ柔軟に利用でき、利用した度合いに応じて課金する仕組み」を提供するものだ。水道や電気などのユーティリティサービスに類似した課金方式であることから、IaaSという呼称が定着する以前には、「ユーティリティコンピューティング」とも言われていた。Hardware as a Service (HaaS)と呼ばれることからも、インフラやハードウェアを利用度に応じたコストで柔軟に活用することが可能なサービスと言える。
一方PaaSは、IaaSに加えてアプリケーションの開発・稼働環境も提供するサービス。SaaSは、アプリケーションをサービスとして提供するもので、かつてはApplication Service Provider(ASP)と呼ばれていたサービスである。いずれも“データセンターを何層ものサービスでラップしたサービス”と考えることもできる。
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