データ処理の高速化が、ビジネスチャンスを呼び込む“革新を起こす”新アーキテクチャ活用術(2)(2/2 ページ)

» 2012年06月28日 12時00分 公開
[鍋野 敬一郎,@IT]
前のページへ 1|2       

処理の高速化が、情報に“価値”を与える

 最近、大量・多種のデータを分析して“価値”を引き出す「ビッグデータ」という言葉がメディアなどで盛んに取り上げられています。大量データを分析できる製品も複数のベンダから提供され、今回紹介したインメモリデータベースも、ビッグデータ活用を支えるテクノロジの1つとして位置付けられています。

 ただ、気を付けたいのは「ビッグデータ」という言葉を「大量のデータ」というイメージ通りに受け取ってしまうと、その本質を見失いやすい、ということです。というのも、「膨大なデータを利用するのは、マーケティングやカスタマーサポート業務だ」と反射的に思い込んでしまいがちだからです。

 しかし、データを“価値”に変える上で着目すべきポイントは、分析処理対象とするデータの「ボリューム」だけではありません。今回、紹介したB社のように、「ポイントは処理の“スピード”にある」と気付けば、「マーケティング業務に限らず、さまざまな業務を見違えるように変えることも可能だ」と考えることができます。つまりB社は、インメモリデータベースの導入により、既存システムの1万倍以上の高速データ処理を実現したことで、それまでタイムリーに使えなかったために、顧みられていなかったデータに“価値”を与えたのです。

 市場競争を勝ち抜くためには、「情報を正確に集め、適切なタイミングで利用する」ことが必要不可欠となります。現在、ERPやCRMなど基幹系システムのデータを分析するBIが多くの企業に浸透していますが、“分析処理の高速化”についての議論はまだ始まったばかりです。

 しかし、コンビニや家電量販店では、POSデータをインメモリデータベースで高速分析し、品ぞろえや商品の陳列パターンに反映するなど、すでに具体的な成果を挙げ始めています。製薬業界でも研究開発にこのテクノロジを利用し、薬の開発・商品化のスピードアップに取り組んでいます。今後はさらに幅広い業界で、インメモリデータベースの活用が広がっていくことでしょう。貴社のビジネスも、“処理のスピード”に注目して見直してみると、業務改革のさまざまな可能性が見えてくるのではないでしょうか。

Profile

鍋野 敬一郎(なべの けいいちろう)

1989年に同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業後、米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。1998年にERPベンダ最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて担当マネージャーとしてmySAP All-in-Oneソリューション(ERP導入テンプレート)を立ち上げた。2003年にSAPジャパンを退社し、現在はコンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事する。またERPやBPM、CPMなどのマーケティングやセミナー活動を行い、最近ではテクノブレーン株式会社が主催するキャリアラボラトリーでIT関連のセミナー講師も務める。SAPを中心としたシステムの設計導入支援を行う株式会社エス・アイ・サービスにて、ERP導入のセカンドオピニオンサービスも提供している。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ