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Yahoo! Internet Guide 2002年5月号 2002年5月8日(水)
ウイルスを送って迷惑を
かけた場合の法的責任とは?

最近のウイルスのほとんどは、メールに添付されて広がる。感染すると、本人が気付かないうちにウイルスを別の人に送信し、被害を拡大させることも多い。その場合の法的責任はどうなるのだろう?


…

Badtrans
昨年末から流行したウイルスで、メールをプレビューしただけで自分自身を添付したメールを送信するなど、強力な感染力を持つ

業務妨害罪(刑法234条)
業務を妨害した者に、3年以下の懲役または50万円以下の罰金

器物損壊罪(刑法261条)
他人の物を壊した者に3年以下の懲役または30万円以下の罰金

知らずに送る
最近流行しているウイルスのほとんどが、感染すると自分自身をメールに添付して「勝手に」送信してしまうという機能を持っている

民事責任
不法行為による損害賠償責任(民法709条)

過失の割合に応じて賠償
過失相殺(民法722条2項)
…

般のコンピュータソフトの売上ランクを見てみよう。ウイルス対策ソフトは、いつもベスト10に数種類ランクインしている。メールをプレビューしただけで感染してしまうBadtransなどのウイルスが流行したり、まさに油断もスキもあったものではないという状態になっている。とくに去年の後半は、ウイルス被害が、爆発的な増加を見せたようだ。

 ウイルスも、データを消去したり、重要な書類を外部に気づかずに送信したりするとなると、重大な被害を起こすものといわざるを得なくなる。自分のウイルス対策に落ち度があって、ウイルス付きのメールをみんなに送信してしまった場合、法的にどのような責任を負うのかという問題を考えてみることにしよう。

 ウイルスの送信に伴う法的責任にも、一般社会における責任と同じように刑事責任(刑罰)と民事責任(損害賠償)があり、この2つは全く別個のものだ。

故意にウイルス送信すれば
刑事責任を負うこともある

 刑事責任は、犯罪を犯したら刑罰を受けるというもので、一般社会では窃盗、強盗、殺人などさまざまな種類がある。ウイルスを送信した場合も刑事責任を負う可能性がある。

 嫌がらせなどで、故意にウイルスを添付したメールを他人に送信した場合、ウイルス送信者が刑事責任を負うことは十分に考えられる。たとえば、受信者のコンピュータの中の重要な文書を外部に送信してしまうようなことをすれば、その受信者の業務を妨害したといえるから業務妨害罪が成立するだろう。そこまで至らなくても、受信者がその駆除などで困惑してしまいシステムを復旧するのに労力を要したというのでも、業務妨害罪が成立するものと思われる。また、ファイルの損壊などでコンピュータそのものを使えない程度に破壊した場合には、器物損壊罪が成立するかもしれない。現実にウイルスを添付したメールを送信して業務妨害罪で逮捕、送検された事件も起こっており、いたずら半分でウイルスを送信しただけであっても、処罰される可能性もあるのだ。また、ウェッブ上でウイルスを配布するようなサイトを開設した場合には、他人がウイルス送信するのを助けたということにもなりかねず、刑事責任を問われる可能性があるだろう。

 もっとも、誤ってウイルスを送信した場合に刑事責任を問われることはまずない。というのは、上記の犯罪については、過失であっても犯罪が成立するということを定めた規定がないからだ。一般ユーザーがウイルスを送信した例の多くは、知らずに送ったものだろう。このように過失による場合は、ウイルス送信者が刑事責任を負うことはまずあり得ない。

過失でも損害を与えれば
賠償することが必要

 一方、故意と過失とを問わず、他人に損害を負わせた場合に損害を賠償しなければならないのが民事責任で、交通事故などがいい例だ。

 ウイルス送信もこれと同じで、たとえば、システム改変やファイル削除を伴うウイルスに感染したことに気づかず、ウイルスを垂れ流して受信者に損害を与えた場合でも、損害賠償を支払わなければならないことがありうるのだ。もっとも、過失でウイルスを送信して受信者が具体的な被害を被った場合には、受信者も十分なウイルス対策を講じていなかったという過失がある。したがって、どっちもどっちということで、送信者と受信者相互の過失の割合に応じて損害賠償の金額が計算されることになるだろう。なお、わざとウイルスを送信した場合には、受信者が被った損害を全額賠償することになる。

 また、自らが過失で送信したウイルスの被害が順次拡大していった場合にどこまで責任を負うかという点についての議論は、いまだ発展途上で確かなことはいえない。

 いずれにしろ、一般ユーザーでもウイルスの感染予防、感染した場合の駆除を適切に行う必要があり、そうでないと民事責任を問われて損害賠償を請求される恐れがある。

…
画面 高橋郁夫の法律の小部屋
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高橋郁夫
弁護士、宇都宮大学工学部講師。法的に問題のないネットワーク運営をするためにどうすべきかという運営ポリシーやコンプライアンス体制の構築に興味をもっている
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