やっぱり出品されたW杯チケット
日本戦チケットにもユーザーは予想外の静観!?
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FIFAワールドカップ開幕まであとわずか。今大会のチケット販売に際して、FIFAは前フランス大会時の混乱を避けるため、「記名式」「本人確認」など厳しい規定を設けている。だが一方で、ネットオークションでは「ワールドカップのチケット売ります」と銘打った取引が展開されている。
「FIFAの規定でも、個人および団体(企業)間でのチケットの転売・譲渡は禁じている。われわれもネットオークション事業者に『チケット売買は規定違反なので一切掲載しないでほしい』と要請。これはユーザーのリスクを回避するためでもある」と、2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会(JAWOC)の広報部参事・首藤久雄氏は言う。
JAWOC 広報部参事
首藤久雄氏
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首藤氏がリスクと語る点は2つ。1つは、出品者が実際にチケットを所持している保証がない点。チケット画像を載せているケースもあるが、国内販売分のチケットは4月末現在、まだだれも手にしていない(偽造を防ぐため5月より発送開始)。もう1つは、規定に「会場で『本人確認』を行う場合がある」と明記されている点。仮に運よくオークションでチケットを手に入れても、大会当日本人でないとわかれば入場を断られる可能性もあるわけだ。
JAWOCは現在、チケット売買の情報がネットオークションに掲載されると、その都度URLを事業者に連絡、「削除要請」をしている。「だが見過ごすこともあり、結果としてそれが掲載されている状態」(首藤氏)。一方のオークション事業者も、「まさに『モグラ叩き』。消しても消しても次が出てくる」(ヤフー広報担当)。Yahoo!オークションの場合、JAWOCから要請があったものについては24時間以内に削除するが、自ら閉め出すことはしていない。「常時約440万アイテムが出品される中、ワールドカップだけを特例と見なして24時間見張り続けるのは不可能。そもそも、オークションでのチケット売買自体は、法に触れる行為でも、都条例に違反※する行為でもない」(ヤフー広報担当)
対照的に楽天は、全面的に削除する方針。同広報担当・小泉和美氏によると、サッカーカテゴリへの出品者に対する「チケット出品禁止の告知文表示(サイト上にて)」と「頻繁なパトロール」がその手段。後者はキーワードなどで常時検索をかけ、見つけ次第削除する手法だ。
楽天フリマオークションでは「サッカー」カテゴリに出品しようとすると、ワールドカップチケット出品禁止の告知が表示される
開幕が近づくにつれ、海外販売分や企業プレゼントのチケットがさらに流出する可能性もある。すでに「個人対個人」だけでなく「企業対個人」、いわゆるチケットの売買を商売にする業者も登場している。「そういった企業には、積極的に警告文を出していく」とJAWOC首藤氏。だが、ユーザーに対しても、いまよりもっと声を大にして「チケットの転売・譲渡禁止」をうたう必要があるだろう。と同時に、「たまたま抽選で当たったが、直前になって行けなくなった」という人がチケットを手放せる手段(払い戻しや二次的流通のシステム)を検討、構築していくことが今後の課題。この根本が解決されない限り、チケット売買をめぐる混乱は終焉を迎えそうにない。
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※都条例では、転売する目的で得たチケットを公共の場で売ろうという行為に対し、「ダフ行為」と位置付けて罪状を科している。今年1月に逮捕された府中市の主婦は、転売を目的に「三鷹の森ジブリ美術館」の入場引換券を購入して売ったため、都条例違反と見なされた
(内容に誤りがあったため、上記の注釈を誌面掲載のものから差し替えています) |
文/牛窪 恵
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