情報との正しいつきあい方を学ぶ、いわゆる「情報教育」を半ば義務化した、新しい学習指導要領がこの4月から施行された。県や市などの自治体単位で教育用のネットワークを構築したり、学習用の素材やソフトを開発するなどの動きが、ここへきてますます活発化している。学校にパソコンさえなかった世代には想像もつかないが、インターネットは着々と学校に根づいている。 茨城県つくば市立並木小学校では6年生の児童がパソコンを開き、「総合的な学習の時間」を利用した研究学習に取りかかる。調査のためのメールのやり取りも手慣れたもの。“他人とのかかわり合いの充実”がネット利用の大きな利点だと話す同校の野村教諭は、「ネットで調べて終わり、ではなく現場へ行って確かめることが大事。それが情報教育だ。児童が目指す情報に早くたどり着けるようコーディネートするのがこれからの教師の役目」と断言する。
つくば市内を中心とした小中学校で導入されているグループウェア「スタディーノート」。共同学習の相手を学校を超えて探せる。自由に書き込めるノートのほか、メール、掲示板、データベースの機能がある
東京都江東区立深川第三中学校では、技術家庭で情報を学ぶ3年生が、オンラインショッピングを仮想体験できるホームページを利用した疑似体験学習を行う。教員が教科ごとに分かれる中学では、各科目のネットの活用度は教員の熱意や習熟度に左右されるが、パソコンやケータイを操る生徒に日々接しているせいか、ネットの利用に消極的な教員は少ないという。
両校とも、情報モラルに関しては校内ガイドラインを設ける一方、授業の中で折に触れ指導する方針をとる。深川三中では昨年、著作権関連団体から講師を招いて講習会も開催した。
悩みは「子どもが学習に使いやすい情報がネット上にまだ少ない」「メンテナンスにお金がかかる」の2点に尽きるようだ。いまやパソコン室のある学校は珍しくないが、100台以上を有する並木小でも古い機種を有効活用したり、助成金を申請するなど知恵を絞っている。深川三中の大塚教諭は「現状の環境ではできることに限界がある。全生徒に1人1台ずつあれば、授業の在り方が根本から変わるはず」と指摘する。
自らの力で情報収集し問題解決ができる能力の育成。そんな新学習指導要領の狙いは、情報の海でおぼれかけた経験を持つ者なら納得できるところだ。情報を扱いこなす、新しい子どもたちの誕生に期待したい。
並木小学校 野村光弘教諭 6年生のクラス担任と情報教育を担当。実はパソコンに触れてまだ4年程度という。「予算がない、とよく言いますが、要は工夫次第では?」 ■ つくば市立並木小学校 www.namiki-e.ibk-tt-net.ed.jp
深川第三中学校 大塚幹太教諭 保健体育担当教諭。学校のホームページ管理もこなす。「困ったときはパソコン部の連中に頼ります。人材は活用しないと(笑)」 ■ 江東区立深川第三中学校 www.koto.ed.jp/fuka3-chu