“住基ネット”を知っていますか?
実施か延期か!? 施行日直前駆け込み情報
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まずはタイトル通りの質問を皆さんに。「住基ネットを知っていますか?」。本誌が発売されるころには各メディアも大きく取り上げているだろうから、認知度も高まっていることと思う。しかし本稿執筆時点の複数の調査では、国民の8割がはっきりした知識を持っていないという結果が出ている。さて、あなたはいかがだろう?
住基ネットの基礎知識
住基ネット(正式には「住民基本台帳ネットワークシステム」)の基本は、すべての国民に11桁の番号を付け、各種行政の基礎となっている全国民の4つの情報(氏名、生年月日、性別、住所)をオンライン化することにある。これらの情報とその変更履歴を、下の図のようにネットワーク化された自治体どうしが共有できるように構築されたシステムだ。
これによって国民は、どんなメリットを得られるのだろう。まず今年8月5日スタート予定の第1次サービスでは、恩給・共済年金などの現況届や各種資格申請時の住民票添付が不要になる。さらに来年8月からは引っ越しの際の役所への届け出が転入時の1回だけで済むようになり、希望者に有償で交付されるICカード(住民基本台帳カード)を利用した場合には、さらに多様で広域的なサービスが受けられるようになる。
また、「住基ネットは電子政府・電子自治体の基盤となるもので、インターネットでの各種手続き処理の実現など行政・国民双方に大きなメリットをもたらす可能性を秘めている」と総務省の馬返秀明氏は語る。
総務省自治行政局市町村課
馬返秀明氏
「広報活動の不足で、国民の認知度が低いことは残念だが、施行後でないと具体的なメリットをアピールできないというのが苦しいところだ」
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●住民基本台帳ネットワークシステムとは
※CS:コミュニケーションサーバー。各市区町村にすでに設置されている住民基本台帳事務のためのコンピュータと新しい住基ネットの橋渡しのために設置 FW:ファイアウォール
行政の期待と民間の不安
しかし、こうしたビジョンの一方で、セキュリティ面など住基ネットにはさまざまな不安材料もあるという。「番号による国民情報の管理はすでに行われているが、現在は行政各部門ごとに違う番号を使っている。これを統一して、ネットワーク化し、なおかつICカードも併用するというのは、それぞれのセキュリティの不備を掛け合わせるようなもの。総務省は、住基ネットを参照して行う事務手続きの範囲をどんどん広げている。ICカードは行政的な目的だけではほとんど魅力がないので、今後民間事業の参入が認められる可能性もある。確かに利便性は上がるかもしれないが、そこに蓄積される情報漏えいの危険は計り知れない」と、数々のオンブズマン活動にかかわっている弁護士・清水勉氏は指摘する。
「ネットワークのセキュリティ面についても、各自治体の責任者の能力には大いに疑問が残る。日弁連のアンケート調査を見ても、専任職員がいない、マニュアルを読んでいないという自治体が多い。結局、国民の利便性をうたいながら、国による管理を第一に考えたシステムなのだ」(清水氏)
こうした意見が錯綜する中、住基ネット稼働は微妙な展開を見せている。本稿執筆時点では稼働凍結案が国会に提出されようとしている。どのような結果が出ているにせよ、今後われわれはどう対応すべきか、下記のサイトなどを参考に、1人ひとりが「自分の問題」として考えてみるべきではないだろうか。
日本弁護士連合会・ 情報問題対策委員会副委員長
清水 勉氏
「住基ネットの利便性には危険がつきものだという認識を広めるべき。国民には、それを納得したうえで、選択する自由があるべきなのではないだろうか」
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