増え続けるオークショントラブル
犯罪防止や紛争処理の取り組みが相次ぎスタート
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警察庁が2月20日に発表した平成14年の「ハイテク犯罪の検挙及び相談受理状況」によれば、インターネットオークションに関する相談は、前年比で1.9倍と大きく増加した。
この数値には、犯罪被害ばかりでなく、違法性が不明確な相談も含まれている。たとえば「送られてきたものが説明と違う」「返品が受け入れられない」といった相談だ。このような取引者間の紛争を、裁判にゆだねることなく「あっせん」(第三者が取り持つ話し合い)で解決しようという実験プロジェクトがスタートし、注目を集めている。
これは「オンラインオークションODR」※(以下ODR)というもので、亜細亜大学法学部教授の町村泰貴氏が企画し、NPO法人であるシロガネ・サイバーポールが運営、外部の有資格者も参加して紛争処理を行う。シロガネ・サイバーポール理事長で弁護士の田島正広氏は、「ネットオークションでは少額なトラブルが多発している。紛争の両当事者に低コストで接触し、紛争解決のための努力をしていく仕組みが必要だ」と、プロジェクトの意義を説明する。あっせん希望者は、ODRのサイトに設けられた申し込みフォームに必要事項を入力、送信。申し込みが受け付けられると、あっせん人を通じて当事者間の交渉が行われる仕組みだ。
※文部科学省科学研究費補助金研究プロジェクト
オンラインオークションODR手続きの流れ
※申し込み受付は4月30日まで
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利用者が自己防衛の意識を
いままで以上に高めることも必要
犯罪性のあるトラブル対策については、オークション運営者側が積極的な動きを見せている。Yahoo!オークションは1月、詐欺被害防止のための情報提供の一環として、トラブル多数出品者の口座リストを公開した。さらに3月17日、詐欺などで金銭的被害を受けた場合に適用される補償制度を改定。複数落札者がいるケースの補償内容を充実させたほか、補償の支払い条項に取引相手の個人情報を確認するなどの条件を追加した。後者の条件は、利用者の意識の向上を促すことを目的に加えられたものだ。これまでに報告されている被害では、「被害者が、相手の個人情報などを確認せずに取引を行ったケースも多い」(Yahoo! JAPAN広報)という。
古物営業法改正によって、ネットオークションでの盗品売買を抑止しようとしている警察も、防犯には利用者の意識向上も必要だとしている。警察庁生活安全企画課の立崎正夫氏は「法律で悪いことをゼロにすることはできない。被害に遭わないように努力をしていかなくては」と利用者の意識向上を呼びかけている。
ODRとYahoo!オークション、警察庁の考えに共通するのは、「規制に頼らない安全策」だ。ネットの快活さを失わないためにも、利用者の意識改革は重要だ。
都道府県警察に寄せられたハイテク犯罪などに関する相談件数(平成14年)
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2000年 |
2001年 |
2002年 |
インターネットオークション |
1301
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2099
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3978
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詐欺・悪質商法(インターネットオークション関係を除く) |
1396
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1963
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3193
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名誉毀損・誹謗中傷 |
1884
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2267
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2566
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違法・有害情報 |
2896
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3282
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2261
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迷惑メール |
1352
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2647
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2130
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不正アクセス・コンピュータウイルス |
505
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1335
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1246
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その他 |
1801
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3684
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3955
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合計 |
1万1135
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1万7277
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1万9329
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※その他には、プロバイダや有料サービス会社とのトラブル、ネットワークセキュリティ全般に関する相談が含まれる
■オンラインオークションODR
homepage3.nifty.com/odr
■警察庁 ハイテク犯罪対策
www.npa.go.jp/hightech
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