いわゆる「出会い系サイト規制法案」(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案)が3月14日に国会へ提出された。警察庁は今通常国会での成立を目指しており、早ければ今秋にも施行される見通しだ。
無法地帯ともいわれる出会い系サイトへついに法の手が伸びるわけだが、一般ユーザーがコミュニティ系サイトを利用しづらくなるのでは? との不安を警察庁生活安全局少年課の天野賀仁氏は一蹴する。
「出会い系サイトにおいて児童が性を売りものにした書き込みをした場合に犯罪が起こりやすいという実態があり、それを規制しようという極めて単純な法案。あくまでも児童の被害防止であり、風紀秩序を取り締まろうなどとは考えていない」。普通のユーザーが規制によって何らかの不利益を被ることはあり得ない、と同氏は強調する。
第二条で、以下の要件を満たすものとして定義されている
第二条で、「18歳未満の者をいう」と定義されている
以下のように定められている
※上記は警察庁提出の法案および説明を編集部でまとめたものであり、国会での審議過程において修正される可能性もある
■インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案 www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g15605103.htm
これに対し、第二種電気通信事業者ら約320社が加入するテレコムサービス協会は、「現状の定義では無用に規制対象を広げる可能性がある」などとする意見書を2度にわたり提出。コミュニティ系サービスを運営する大手プロバイダ数社もこれに倣っているが、コメントを求めたところ「今回は差し控えたい」と慎重な姿勢が目立った。これには「(イメージの悪い)出会い系サイトと自社サービスを結び付けてほしくない」という思惑が見え隠れする。唯一、回答があったYahoo! JAPANは、意見書※と同様の懸念を述べたうえで「できるところから防止策を講じたいという姿勢は評価している。事業者としてもインターネットの悪用は防止したい」(ヤフー法務部長・別所直哉氏)と、おおむね賛成との意向を示している。
Yahoo! JAPANが2月中旬に行った調査では、58%のユーザーが児童の利用制限では買春や援助交際が「ほとんどなくならない」と答えている。警察庁は「(ネット上の不正勧誘行為を)すべて取り締まれるとは思っていない。だが違法行為になるとわかれば大多数の児童が書き込みを控え、犯罪を未然に防げる」(天野氏)と“法の抑止力”に期待しているようだ。
児童買春のみならず、強姦や殺人などの重要犯罪が急増する実態が招いたこの規制、責任の多くは己の性的嗜好を満たすためにネットを悪用した一部の大人たちにある。審議の推移を見守りたい。
※ヤフーはインターネットプロバイダー協会(JAIPA)、マイクロソフトとともに2月27日、警察庁に意見書を提出している
●児童・大人の区別なく、誘った側に罰則がある、児童買春などの勧誘行為の禁止
●出会い系サイトの18歳以下の利用規制
上はYahoo! JAPANが2月に行った調査結果から「新しい法案の効力への期待」についての項目を引用したもの。「出会い系サイト」として社会問題となった特殊サイトを含むコミュニティ型サイト全般に対する、インターネットユーザーの意識を収集する目的で行われた。
有効回答数:4455名(男性:女性の比率=6:4)
「規制の必要性は認めるが、出会い系サイトの定義がどこまで明確になるか不安。風営法のような限定した定義を検討してほしい」。まだ議論が不十分であると、テレコムサービス協会の桑子博行委員長は主張する ■テレコムサービス協会の意見書 www.telesa.or.jp/004info/2003/ index_2003_004.htm