比較的早くサービスを発表したものの、実際の提供内容についての詳細はなかなか案内されず、未定の部分が多い状態で取材にうかがうことになった。しかしながら、技術的には確定しており、その詳細を聞くことができた。

　興味深かったのは、20Mbps超で採用されているAnnexIについての話だ。同社技術企画部マネージャーの渡辺氏によると、「今回のAnnexIと従来のAnnexCは、距離にして2kmくらいをポイントとして、速度が逆転する傾向にある」という。「ADSL信号のトータルの送信電力は帯域全体で（積分して）20dB以内という制限があります。帯域を広げると、その分、送信電力の密度を落とさなくてはなりません」（渡辺氏）。そのため、近距離でノイズの影響が少ない場合は問題ないが、長距離ではSN比（信号とノイズの比）が悪くなり、AnnexCに比べて速度が落ちるというわけだ。

　このため、同社では、「距離とノイズを主なパラメータとして、AnnexIとAnnexCを自動的に切り替える」（渡辺氏）としている。ただし、同じAnnexCでもモデムなどの特性が向上しているため、既存の12Mbpsサービスと比べると多少の速度の上積みはあると予想できる。

秋ごろには30Mbpsの
投入も検討中だが……

　また、同社が24Mbps ADSLを発表した際に、同時にアナウンスした30Mbpsのサービスだが、これは既存の規格のまま速度を向上させるものではなく、いろいろな新技術を複合的に投入することで実現を目指しているという。具体的には「3750kHzまで帯域を拡張するクワッドスペクトラム、搬送波に15bit以上のデータをローディングするハイビットローディングを検討中」（渡辺氏）とのことだ。

　同様の技術を採用したサービスに関しては、他事業者は50Mbps超と位置付けているが、現実的な速度という意味で30Mbpsと発表したようだ。

　ただし、これについては技術的に検討しているレベルなので、どのタイミングで投入されるかは不明だ。同社の企画部長である五十嵐氏も「30Mbpsを新たなサービスとして追加するのか、現状の24Mbpsのアップグレードサービスとして提供するのかもまだ決まっていない」としている。これから入会を考えている人が、現状の24Mbpsの導入を控えて、30Mbpsの登場まで待つというようなものではなさそうだ。

イー･アクセス 技術本部 技術企画部 マネージャー 渡辺芳治氏

イー･アクセス 企画部長 五十嵐尚氏

20M超ADSLの真実　4/6