40M ADSLが各社から出揃う 上りもスピードアップ。乗り換えに必要な条件は？

イー・アクセスに続いて、NTT東日本、ソフトバンクBB、アッカ・ネットワークス、NTT西日本がサービス開始を発表し、40MクラスのADSLサービスが出揃った（下表参照）。JANISネットが1999年9月1日に開始した日本初の商用ADSLサービスは「下り最大1.5Mbps/上り最大272Kbps」。規格上では実に約26倍の速度アップである。

「規格上」という理由は、ADSLは、規格上の速度と実際に利用できる速度に差があるためだ。ご存じの人も多いだろうが、ADSLの回線速度は、電話局から離れたりノイズが増えたりすると速度が激減してしまう。

　40M ADSLより先にスタートした20M超ADSLのフィールドデータが各事業者で公開され始めたが、20Mbps以上の速度を利用できるユーザーは全体の一握りとわかってきた。40M ADSLでは、20M超ADSLよりさらに高い周波数を使うことで速度アップを実現しているが、高い周波数ほど減衰しやすく、納得のいく速度を得られるユーザーは相当絞られる可能性もある。

　これに対し、ソフトバンク広報室の岩永公就氏は、「45Mサービスで大きなメリットを期待できる距離は電話局から約1.5キロ以内」と答える。また、イー・アクセスの「ADSLプラスQ」では、2キロ以内のユーザーなら大幅な速度アップが見込めるとしている。それより遠い場合は、若干の上乗せは期待できるものの、大きな速度向上は期待しにくい。40M ADSLに乗り換える目安は「1.5〜2キロ以内」といえそうだ。

ADSL下り速度アップの変遷

今後は上り速度アップがトレンドに

　もう1つ、今回の速度アップには、これまでと異なる点がある。Yahoo! BBとアッカ・ネットワークスが提供するサービスでは、上りの速度がこれまでの1Mbpsから3Mbpsに増えているのだ。上りの回線速度をアップした理由について、岩永氏は「これまでは下り速度を求める声が圧倒的だったが、上りの速度を求めるユーザーが増えてきた。ユーザーニーズの変化と新サービスのタイミングが一致したため、上りの速度アップを決定した」とニーズの変化をあげる。

　現サービスでは上り回線が1Mbpsにとどまるイー・アクセスは、今後の上り回線速度アップの可能性について「前向きに提供を考えている」、NTT東日本も「増速することを前提に技術的な検討を進めている」と回答しており、今後は上りの速度アップがトレンドになりそうだ。

　しかし、上りの速度アップには思わぬアキレス腱がある。既存ADSLサービスとの干渉問題だ。これについて、ソフトバンクBB コンシューマBB営業企画本部の高橋正人氏は「Yahoo! BBで採用する規格は、ほかのADSLサービスに影響を与えないよう自主規制しているが、どの事業者も納得できるように協議したうえでサービスを開始する」と、事業者間の調整を図っている現状を語る。

　事業者間の調整が長引くと、上り3Mサービスの提供が遅れる可能性もあるが、この場合は「上り1Mbpsで45Mサービスを提供し、規格の合意後に上りの無料アップグレードで対応する」（岩永氏）

　このように、上りの速度アップは開始時期が流動的な面がある。上り速度が目的なら、実際にサービスが始まるまで見守った方がよさそうだ。

※1　プロバイダ料金＋サービス料＋モデムレンタル料＋NTT回線使用料（NTT東日本）で算出
※2　OCNを利用した場合。プロバイダ料金＋モデムレンタル料＋NTT回線使用料（NTT東日本）で算出
※3　ODNを利用した場合。プロバイダ料金＋モデムレンタル料＋NTT回線使用料（NTT東日本）で算出
※4　ぷらら（フレッツ・ADSLセット）を利用した場合。フレッツ・ADSL利用料金＋モデムレンタル料＋プロバイダ料金で算出
※5　上り最大3Mbpsの提供は2004年春ごろの予定。ファームウェアのバージョンアップで対応

		ソフトバンクBB コンシューマBB営業企画本部 高橋正人氏 「チップレベルでは上り5M〜6M、下り50Mも実現可能。ただし、今後のADSLは、速度だけでなく、無線LANやIP電話などの周辺サービスを加えた総合力の勝負となるでしょう」
		文/山本浩司

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