というのも、ここまでの規模になると、もうDVCPRO HDやHDCAMでいいじゃん、ということになるからだ。HDVはMPEG記録であるため、編集のことを考えると、他規格に対してアドバンテージがあるとも思えない。
またHDV規格の1080i撮影は、本来のHD解像度1920×1080ピクセルではなく、横方向の解像度を下げて1440×1080ピクセルであることから、画質面での訴求力もいまひとつだ。もっともHDCAMだって実は横方向はその程度でしか録ってないという話もある。実は似たようなもんかも、という笑えない状況になる可能性も、なきにしもあらずだが……。
思いがけないHDVへの期待感で、慌てたのが松下電器産業だ。同社はメモリカードに記録する新型カメラ「DVCPRO P2」シリーズを今年立ち上げる。昨年までの流れでは、テープメディアに縛られない画期的な撮影スタイルとして業界でも期待感が高まり、SDカードの大容量化に伴ってゆくゆくはハイエンドHDモデルも、といったロードマップで展開する。そして今年は、SDモデルの実機登場といった話題性もあった。
だが実際に今回のNABでは、同じHDでもハイエンド方向ではなく、もっと手軽なHDVに期待が寄せられた。同社としては、テープメディアからメモリメディアへの転換という、大きな流れを作りたい思惑と大きなズレを感じたことだろう。
さらに同社は、HDVフォーマット賛同メーカーではない。もともとDVCPROは、放送でもCS局のような業務機に近いレベルから浸透してきただけあって、このまま黙っているとHDの業務機はHDVに取られてしまい、基盤を失うことにもなりかねない。
そこで松下では、業務用レンジとしてHD仕様P2の小型カムコーダーの説明を、わざわざ別室を設けて行なった。業務用として、HDVみたいな小型カメラもあるよ、というアピールを行なう必要に迫られた格好だ。
別室では、この小型カムコーダーのモックアップとそのターゲットスペック、そしてMPEG-2 25MbpsでHDをエンコードするとこうなるよ、というシミュレーション映像を展示した。
いや悪く言うつもりはないんだけどさぁ、わざわざ貴重な時間を割いてブースに集まってだな、ラスベガス・コンベンションセンター・ノースホール奥の別室まで、カルガモの引っ越しよろしくぞろぞろ連なって延々歩かされたあげく、配付資料もなしでクリアケースに入れたプレゼン資料を指さしながら、口頭でしどろもどろに説明され、モックと画質のシミュレーションだけ見せられても、どうリアクションしたもんか困っちゃうでしょ、フツー。ただ「頑張ってるから忘れないでネ」ぐらいの意味しか持たない展示のやり方に、現場が大慌てで対応したことがうかがい知れるのみだ。
ターゲットスペックを見てみると、1080 60i、同30P、720 60P、同30Pの4種。記録方式はMPEG-2 TS 50Mbpsまたは25Mbpsとなっており、HDV規格を内包しながらも、もうちょっと上を狙いたい思惑が見て取れる。記録方式をMPEG-2 TSにすることで、SDカードの大容量化を待たずして早期に投入する構えだ。今の松下の勢いならば、ヘタすれば来年ぐらいには実機を出してくる可能性もある。まさにHDVに対する牽制球を投げたというわけだろう。
ビクターと並んでHDVフォーマットのキーを握るのが、ソニーだ。
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