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あらゆる輸入音楽CDに規制を?――危険な著作権法改正が進行中輸入音楽CDは買えなくなるのか?(4/4 ページ)

» 2004年05月12日 17時57分 公開
[渡邊宏, 中川純一,ITmedia]
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 「諸外国にも(CDの輸入制限を行う)輸入権という法律はあるが、再販制度と輸入権の両方がある国はない」(マックルーア氏)。ピーター・バラカン氏も、「輸入盤として入ってくるCDを規制しつつ、国内での販売価格を規制する再販制度があるのはズルい」と声をそろえた。

 川内議員によれば、公正取引委員会からは、法案審議にあたって、法改正自体に独禁法上の問題はないとしながらも、「輸入権が認められるならば、再販制度は見直すべき」との意見が出されたそうだ。

photo 会場の「新宿ロフトプラスワン」は超満員。来場者からの質問も多く、関心の高さを伺わせる

還流CDも音楽文化の一つの形。法律で規制するのはナンセンス

 シンポジウムでは、法案の目的とされている「還流CDの阻止」自体についても疑問が呈された。

 音楽評論家の高橋健太郎氏が「さっき買ってきたのですが…」と取り出したのはスガシカオの『SMILE』の台湾還流盤。ディスカウントストアでは2000円程度で売られているそうだ。

 「アジア版というと500円程度なんていう想像をされてしまうかもしれないが、そんなに安いわけでもない。ネット通販などでは2300円ぐらいで販売されている。そう考えると欧米からの輸入CDと大差ない。それを法律で禁止しなくてはいけないのだろうか? しかも、還流CDは68万枚、輸入CDは6000万枚。“どっちを問題にしているんだ”という疑問が沸いてくる」

 高橋氏は続ける。

 「このCDには全曲に中国語のタイトルが付いている。これも音楽文化だと思う。日本の曲に中国語のタイトルを付けて、台湾で売る。日本のレコード会社が輸入CDにタイトルを付けて、僕らが対訳をつけてその分の価格を乗せて販売する。同じことを僕らもしてきた」

 「そうして日本の洋楽マーケットが育ってきたと思っている。同じことをアジアの人が日本のCDに対してやってくれるかもしれない。でも、法律によって、それを僕たちが見ることができなくなってしまう」

 「音楽文化を活性化させるのはオープンな交流だと思う。僕らは洋楽に対してそれを行ってきたから、6000万枚、7000万枚という洋楽マーケットができあがった。オープンな交流が進めば、日本の音楽がもっとアジアのマーケットに進出できるはず」

 「日本にも還流したCDが入ってくるかもしれない。でも、それは(海賊版と違い)最終的にそのレコード会社の収入になるわけで、(収入があれば)もっとたくさん日本のアーティストのCDをリリースできるようになる。そうしてマーケットが広がれば、最終的には日本の音楽業界に還元される」

 高橋氏は、音楽文化の交流、アジアの音楽市場拡大という側面からも、短絡的に還流CDを法律で規制する必要はないと意見を述べる。ピーター・バラカン氏も「(還流CDを買う人は)そのアーティストの熱狂的なファンで、すでにその人のオリジナルを持っている人が多いんじゃないかと思います」と、“還流CD=安価=国内版の売り上げに影響を与える”という安易な図式に疑問を呈した。

 音楽文化にとって大きなリスクを抱える著作権法改正。すでに参議院を通過し、5月下旬から衆議院での審議に入る。衆院を通過すれば、2005年1月に施行される見通しだ。

 本連載では、「真意」もその「影響」も確実な情報の少ない今回の著作権法改正について、さまざまな立場の人たちから話を聞き、その「真実」に少しでも迫っていきたい。

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