「日本国内で発売することが明確になっていなければ、輸入がストップすることはあり得ません。(それ以外の場合)CDを発売する時点で、日本に出荷しないことが明確にされていなければなりませんから、日本市場に流通させたくないならば、『日本販売禁止』という表示をすることが要件になります」
『販売開始時点で明確な表示がなされているか』――これがまず判断の基準になるという。つまり、『日本販売禁止』の表示がないCDについては、輸入禁止の対象にならないというのが文化庁の判断だ。ただ、この点について法律家の間での見解は分かれている。
また、一般のユーザーが懸念を抱いていることに、Amazon.comなどを利用した個人輸入の問題があるだろう。ここまでの話を聞く限りでは、海外レーベルがCDに『日本販売禁止』と明記しなければ、問題ないように思える。しかし、本当に問題なく輸入できるのだろうか。
「販売目的ではないことを証明しなくてはなりません。CD1枚を買う程度ならば、ほぼ問題ないでしょう」
それでは、大量に買い込んできた場合には?
「(税関で止められることは)ありえるでしょう。50枚・100枚という枚数で持ち込まれた場合には、税関としても止めざるを得ないでしょうが、業種・職種などを総合的に考えて判断できると考えています」
要するにケースバイケースということで、“押さえられる”かもしれないという危険性は完全には解消されないわけだ。また法律が抑止力となって販売側が日本への出荷を自粛してしまう可能性も否定できないだろう。
結局のところ、「輸入音楽CDはこれまで通り。問題はない」という確証を得るには至らなかった――これが文化庁の話を聞いた後の筆者の本音だ。森下氏の個々の話は理解できるものの、すべてにエクスキューズがつく。
「洋盤に対する懸念や、CDの価格が高止まるのではないかという懸念については、法案の起案段階から想定していたことで、その点に関する批判は仕方がないと思っています。(法案は)その上で、国際社会の一員としての日本の立場を考えたものです」
森下氏も輸入音楽CDに対する懸念があることを繰り返し認める。
しかしながら、「洋盤については大丈夫です」とも言う。
「われわれもあれ(日本レコード協会のメッセージ)が示されたから安心とは思っていません。(しかし)輸入CDを止めたいと一番思っているのはメジャーレーベルの日本支社でしょうから、露骨に顧客を裏切るようなことはしないと考えています。そうした意味では、“よりどころ”としていいかと思います」
「日本のレコード会社がアジアに進出してくれというのが本音。というか出てくれないと。価格についても、日本は2000万人、3000万人の市場しかないですが、米国は全世界市場で展開しています。(日本のレコード会社が)アジアに進出できれば薄利多売でもっとCDの価格は下がると思います」
「それに、インターネットを通じての音楽販売が広がれば、値段は下がります。1年、2年でそう変わるとは思いませんが、レコード会社の企業努力の手段を増やすためには、有効な措置だと思います」
輸入CDへの副作用は認めつつも、著作権者の権利を守りながら、日本のレコード会社のアジア進出を促す。それが、ひいては消費者利益につながるというのが文化庁の主張だ。次回は実際のレコード輸入業者と日本レコード協会に、それぞれの立場から今回の法改正への見解を聞いてみよう。
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