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コンテンツ保護の“日米差”はどこからくるのか(2/3 ページ)

» 2004年06月14日 10時03分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 NHKは別として、民放のテレビを見る限り、われわれはお金を払っていない。だがコンテンツ制作者には、対価は支払われなければならない。その支払いを代わってくれるのがスポンサーであり、その代償としてスポンサーは、自社のセールストークをコンテンツの中に盛り込む権利を得る。

 これはちょっと難しい。つまりコンテンツの占有時間の一部を、広告枠という商品に変えて切り売りすることで、違う人から対価をもらうというビジネスモデルである。理屈としては、大人なら説明すれば分かってもらえるところだろう。

 だがこのモデルの特徴というか問題は、末端の視聴者にその理屈が明確に伝えられないままに、もう何十年もそのまんまやってきてしまったというところだろう。

 だから番組を見て、CMがうっとうしいと思う。そしてビデオレコーダメーカーは、CMカット機能を付ける。ところがその機能が上手く働けば、自社の製品のCMも見てもらえない。どこかで回転がズレている。まあそれは別の話なので、ここではおいておこう。

 本来ならば、次に第3ステップとして、“インターネット独自の流通ビジネス”が入る。今までのお金の流れとは別のアイデアが、ホントはここに来るべきだったのだ。だがそれを思いつく以前に、インターネットが流通インフラとして存在するようになった。

 Winnyなどが問題となっているのは、第1、第2のステップで触れたコンテンツの中身だけをクリッと取りだして、そのまま無償で不特定多数の人間に自由に解放してしまうところにある。

 コンテンツの対価を払う行程もなければ、間にスポンサーが入る余地もない。だから、オリジナルの制作者にお金が入らない。「デジタルコピー」が問題ではないのである。お金が関係するプロセスがすっ飛ばされているところに問題があるのだ。

 誰かが第3のステップを発見、あるいは発明しなければ、インターネットがコンテンツビジネスの脅威であることは、今後も変わらないだろう。

技術に罪が問えるか

 ネットが脅威だから、とにかくコピーはダメ。ユーザーが自分でコピーして2倍3倍になるなんて考えただけでもゾッとするっ、というのが、今までの考え方だ。

ホワイトサイド氏:「P2P技術に関する動きや問題は、今や各国で目立ったものになってきています。Winny作者逮捕も米国の報道で取り上げられ、一般によく知られています」

 「技術系の人間が、技術革新(イノベーション)を成し遂げることと、市場における利用(アプリケーション)をどうやって分離するかということは、複雑かつ挑戦的なジレンマです。ですが産業の基盤にあるのは、技術革新です。新しい汎用性のある技術が市場投入されるときは、いつもテクノロジーの乱用が懸念されてきました。ですが、その懸念が水をさす形で技術革新が少なくなるようであれば、問題です」

 日本において、P2Pによる損害賠償でお金をよこせと騒いでいるのが、オリジナルを作った人間ではなく、コピーをする権利を持っている組織が騒いでいるところに、問題のややこしさがある。

 彼らは「オレらのコピー権がデジタルコピーによって侵害された」と言っているわけで、仮に損害が回収されたとしても、そのお金が著作権者にも分配される保証はどこにもない。なぜならば、どの作品がどれだけの件数侵害されたかといった具体的なデータが把握できない限り、オリジナル制作者には払いようがないからである。

ジェフリー・ローレンス氏:「重要なのは、技術革新(イノベーション)と技術の応用(アプリケーション)を区別することです。応用というのは個別のふるまい、テクノロジーは単なるツール。どういう人間がどういう操作をするかで、どういう性格の物かということが決まる。ツールそのものが悪ではないということです」

 例えばトンカチで人の頭を殴ったとすると、悪いのは殴ったヤツであって、トンカチではない。人間がアプリケーションであり、トンカチがツールであるということだ。もしトンカチが悪い、全廃しよう、ということになったら、大工さんが困っちゃうし、ポチの犬小屋作ってるパパも近所から白い目で見られることになる(関連記事)。

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