ITmedia NEWS >

iTunes Music Store、ついに欧州上陸(2/2 ページ)

» 2004年06月16日 13時47分 公開
[IDG Japan]
IDG
前のページへ 1|2       

 同氏はオンライン音楽の窃盗を非難し、次のように述べた。「まず海賊行為について理解しよう。このような行為では、信頼性のないダウンロードファイルを手にすることになる。楽曲を入手するのに何度もダウンロードを試みなくてはならないし、やっと手に入っても、10年前の技術でエンコードされていて、最後の4秒間が欠けていたりする。いち早く聴けるわけでもなく、アートワークも手に入らない。そしてこれは窃盗行為だ。われわれは莫大なサーバファームから、高速で信頼性の高いダウンロードを提供している――これはわれわれが非常に得意とするところだ。窃盗行為にはならずに、良いカルマになる」

 「ユーザーは自分で音楽を所有し、会費は不要だ。実験の結果、ユーザーは音楽を借りるのではなく、所有する方を望んでいることが分かっている。お気に入りの楽曲を聞くのに月額10ドルを払わなくてはならないのなら、10年後には1000ドル払っていることになる。私はそんなことはしたくない。楽曲を所有したいのだ」(ジョブズ氏)

 同氏はそれから、米国と同じように提供される私的利用権に触れた。「ユーザーは楽曲を所有する」とし、iTMSの仕組みについても説明した。

 「Webサイト型の音楽ストアは最低だ。機能しない」。同氏はこう語り、(iTMSの)購入インタフェースとジュークボックスが、統合された単体のアプリケーションとして機能する仕組みを解説した。「iTunesはこれまでに開発された中で最高のWindowsソフトだと言う人もいる」と同氏は誇らしげに語った。

 「このように、われわれは海賊行為と戦ってきた――われわれは(海賊版よりも)ずっと優れたサービスを提供している」(同氏)

 次に同氏は、以下の特徴を紹介した。

  • 5000作のオーディオブック(3分間の試聴付き)

  • ギフト券(英国では5〜100ポンド分を提供。仏独ではユーロで提供)

  • ザ・ダークネス、ハービー・ハンコック、モービー、デイブ・ブリューベックなどの有名人のプレイリスト。「たくさんのリストが掲載され、毎日増えていく」とジョブズ氏は説明している。

  • ミュージックビデオ。ジョブズ氏は、ジェイミー・カラムの「All at Sea」のビデオを披露した。

 「先月、われわれは本当にクールなものを加えたばかりだ。それは「iMix」と呼ばれている」とジョブズ氏は語り、このコミュニティーベースのプレイリスト共有・評価機能の仕組みを説明した。「iMixを導入してから60日足らずだが、5万以上のプレイリストが共有され、10万件以上の評価があった」

 同氏によると、現在提供されている楽曲は、全大手レーベルと多数の独立系レーベルの楽曲を含めて70万曲。独立系レーベルは、iTMSが世界最大にして最高のサービスだとの理由から、同サービスでの楽曲販売を希望したと同氏は語る。クラシック音楽も提供されている。

 価格は1曲0.79ポンド。「シングル曲はすべて79ペンス、アルバムは7.99ポンドで販売される」と同氏。

 ドイツとフランスでは1曲0.99ユーロ、アルバムはほとんどの場合9.99ユーロ。それぞれの国のストアでは、地域限定のコンテンツも提供されるという。

 「われわれは欧州全域向けのストアに取り組んでおり、10月に立ち上げたい考えだ。しかしこれら3カ国のストアは今日から利用できる」と同氏は言い添えた。

iTunesのデモ

 それからジョブズ氏は発表会に集まった報道陣とゲストに、CD作成、アルバムカバーアート、Party Shuffle、iTunesユーザー間でのRendezvousによる楽曲共有など、iTunesの機能を紹介した。

 (Appleのマーケティングマネジャー)ピーター・ロウ氏がステージに呼ばれ、楽曲のワイヤレスストリーミングのデモを行った。デモではWindows搭載のノートPC(Hewlett-Packardのモデルのようだった)が使われた。

 またジョブズ氏は、クリック1回で済む楽曲購入システムのシンプルさを披露した。レイ・チャールズの楽曲を試聴しながら、同氏は「試聴版の曲はすべて、完全版と品質が同じだ」と語った。

 アルバムの価格はiTMSの中でも異なっており、「Bowie at the Beeb」は9.48ポンド。ジョブズ氏はデビッド・ボウイ、ジミ・ヘンドリクス、アリシア・キーズに注目しており、Disneyのサウンドトラックの中で気に入っている楽曲の1つが、「メリーポピンズ」であることも告白した。

 さらに同氏はオーディオブックを紹介し、9.95ポンドと12.95ポンドの2種類の価格を明らかにした。

 同氏はそれからドイツ版のストアに触れた。ドイツ版はフランス版と同様に完全にローカライズされ、地元のアーティストの作品もいくらか提供している。

 「このプレゼンテーションの後、3カ国のストアがオープンする」と同氏。「合計4カ国のストアで、世界の音楽販売の60%を占めることになる」

 「われわれはユーザーがどこで音楽を聴くのかを考えた。まずはコンピュータだ。おそらく2番目に多いのは、iPodでの再生だろう。3月末の時点でiPodの販売台数は300万台に上り、同月の市場シェアは50%だった。製造が追いつかないところもある」と同氏は語り、購入のペースが急速に伸びていると付け加えた。

 「年内には、車内での音楽視聴に関する発表を行いたいと思っている」(ジョブズ氏)

 同氏はAltec Lansingなどを引き合いに出し、「巨大なiPod経済圏が存在していることが明らかになっている。iPod関連製品は250種類に上る」と述べた。

AirPort Express

 「われわれが初めて無線ネットワーク機能搭載のコンピュータを出荷したのは1999年のことだった。昨年は初めてもっと高速な802.11g版を投入した。そして先週は、初のポータブルベースステーションであるAirPort Expressを発表した」(ジョブズ氏)

 「この製品はMacにもPCにも対応し、iTunesと完全に統合されている。これでリビングルームに食い込めたと思っている。この製品は来月99ポンドで発売される」と同氏。

 同氏はこう続けた。「われわれは音楽を聴く場所として最も人気を博しており、順調に前進していると思う。このAirPort Expressを、われわれは最も人気のある音楽の購入場所、つまりiTMSと組み合わせている」

 「こうした戦略を進める理由の1つは、われわれも音楽を愛しているからだ。結局、重要なのはアーティストだ――それが音楽に関係している。われわれは独占コンテンツの提供や、アーティストとの協力を好んでいる」と同氏は熱心に語った。

アーティストも登場

 「今日、われわれは非常にラッキーだ。23歳のアリシア・キーズが来てくれた。彼女はツアー中だが、時間を割いてここに来てくれたのだ。彼女はグラミー賞5冠を達成し……」

 紹介を受けてキーズさんがステージに上がると、ジョブズ氏はステージから降り、聴衆は拍手を送った。

 「iTunesは私のお気に入りで、自分のコンピュータで使っています。私はオールディーズの大ファンなので、ここでレイ・チャールズをしのんでちょっとしたパフォーマンスを。彼が亡くなって寂しくなるわ」と彼女は語り、「Night and Day」を歌い出した。

 「夜はiTunesを聴くのに一番いい時間ね」と彼女は歌の途中でジョークを飛ばし、歌い終わった後にもこの言葉を繰り返した。

 そして彼女はこう続けた。「私がほかにiTunesで気に入っているのは、限定トラックを聴ける点。私もiTunesで限定トラックを提供しているの。これからそれを歌います」

前のページへ 1|2       

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.