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「モバイル放送」を追いかけた2500キロ――『ワレ到着セリ』4日間同行レポート(後編)(2/4 ページ)

» 2004年06月17日 11時22分 公開
[粕川満,ITmedia]

 ほとんど人の姿を見かけないこうした山間部でも、モバイル放送の受信は快調そのものだ。当たり前の話なのだが、いつ受信する人間が現れるのかわからないこのような場所ですらも、衛星からの電波が静かに降り注いでいるのがなんとも不思議な気がする。

谷間の道の左右には棚田が広がる

 さらに道を上っていくと、やがて木がうっそうと生い茂る本当の山道へと景色が変わる。左右を見ると、かなりの高さの木が生えている。

 明らかに南方向に48度以上の高さで樹木が覆い被さっているように見える。しかし、ここでもけっこう受信レベルは高く途切れるようなことはない。木と木の間がかなり粗になっているために電波を通すらしい。

 どうやら、木の間から南方向の空がちらちらと見えるような山道であれば、受信にはさほど影響はないようである。

木立はクルマより遙かに高いが、すき間から衛星波を拾えるようだ

 しかし、さらに突き進んでいくと、はっきりと電波が途切れるようになった。撮影のために一時停止してもらう。一目見てわかったが、木ではなくて、土の土手というか崖が立ちふさがっているためだ。これではいかなSバンドといえども突破はできない。将来的にもこんな山奥にギャップフィラーを設置することはないだろうから、このような場所では受信は諦めた方がよいかもしれない。

土の壁のようになった場所ではさすがにどうしようもない

 山道での実験に満足し、再び鹿野ICから中国自動車道に入ることにした。なにしろ一般道の走行は時間がかかる。すでにこの時点で午後2時なのである。残り距離から計算すると、あとは高速をひた走らないと京都にいつ着くかわからない。

 高速に入って巡航モードに戻り、モバイル放送のコンテンツをいろいろ変えて視聴してみた。初期の興味も薄れて、「モバイル放送のある車内」が当たり前になってくると、やはり選ぶコンテンツは「音楽が一番」となる。長時間聴いていても疲れないし、音声は少しくらい途切れてもストレスにならない。音声信号にはMPEG-2 AACを使用するということなので、車内で聞く程度なら十分なクオリティだろう。

 もっとも、今回取材に同行していたクルマ雑誌の記者の方に聞いたところ、いまやクルマにも5.1chやプラズマディスプレイ(!)を搭載する人もいるそうなので、そのレベルの人たちからすれば物足りないかもしれないが……。

 中国自動車道は、山陽自動車道よりも内陸部を通るにも関わらず、トンネルの数は遙かに少ない。途切れることのない音楽を聴きながら渋滞のない道路を走行していると、運転されている方以外はみんなウトウトしはじめ……気が付いたら私も寝てしまっていたようだ。眠気を誘うほど快適な受信状態だったと弁明しておく。

 名神自動車道に入り、中国吹田ICを過ぎてもトンネルと高架の直下以外は問題なく受信できている。ただし、左右には防音壁が覆い被さるようにあるので、これが反対車線では影響するかもしれないと思った。私も4日間で、ずいぶんと南方向を気にする癖がついてしまったものである。

 この防音壁にはさまざまタイプがあるが、上部が湾曲しているタイプは、受信にはかなり邪魔になる。また、素材によっては透過できるものもあるようだが、鉄の芯材がメッシュのように入っていると、そこで通過できなくなってしまう(電子レンジの扉に穴が空いていても電磁波が漏れてこないのと一緒である)。ただ、Sバンド(約2.6GHz)の波長は約12cmなので、それより大きなすき間であれば影響はないはずだ。

 覆い被さるような防音壁(これは中央自動車道で撮影したもの)

 やがて京都南ICに到着し、。ここで一般道へ降りる。市内を昨日とは逆に通ったのだが、今度は南側に車線を挟むかたちになるためか、意外と電波が途絶することはない。

 午後8時にホテルに到着。この日は山道で時間を取られたせいか、ほとんど高速を走りづめだった印象が強い。

 残るはあと一日となった。

小仏峠の向こうはギャップフィラー圏内

 いよいよ最終日。

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