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ITがサッカーを進化させる?試合分析から視聴者への情報提供まで(2/2 ページ)

» 2004年06月22日 06時18分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 「ボールタッチごとにデータを取るのですが、そのデータ入力回数は1試合で2000回ほどになります。そして、そのボールタッチごとに、どの選手がどのような動きをしたのかを入力していきます」

 「シュートという動作一つとっても右足・左足・頭のどこで打ったのか、ボールがどういった軌跡を描いたのか、ゴールマウスのどこに飛んだのか、などさまざまな要素があります。細かな要素まで含めると数え切れないぐらいですね(笑)」(同社)

 実際に同社スタッフがデータ入力をしている現場を見ることができたが、選手がボールに触れるごとにVTRをストップし、その動きを逐一PCに入力していた。サッカーの試合は1試合90分。ロスタイムを入れても100分に満たないほどだが、一試合の入力には、慣れたスタッフでも10時間(600分)近くかかるそうだ。

 こうして同社が記録したデータの分析例が下の図。これはある2選手のパスを出す方向・距離・味方へ渡った成功率をビジュアル化したもの。左右の選手を比べた場合、右の選手の方が右斜め前方へのロングパスを得意としていることが分かる。

photo パス方向分析

今後はアマチュアにも利用の裾野が広がる

 同社のデータ収集・分析結果はこうしたチーム強化のみに使われるのみではなく、形を変えて一般の視聴者にも提供されている。

 スポーツ雑誌や新聞で目にする選手のプレーエリア図やパス成功率などを始め、イタリア・セリエAの試合を自分の好きなシーンだけ見ることができるブロードバンドコンテンツ「SERIE A Play on Search」や携帯電話でJリーグの全試合のライブ実況中継を楽しめる「実況エキサイトスポーツ!」、Yahoo! Japanのサッカーチーム運営ゲーム「ファンタジーサッカー」にも同社のデータが使用されている。

 元来は自分のチームを分析するため、対戦相手の弱点を探るためのものとして開発が進められたが、結果としては、視聴者がさまざまな角度でサッカーを楽しむための一助となったといえる。

 Data Strikerは現在、データと映像をシンクロさせ、PCの前で「○月○日のA対BでC選手が見せたあのプレーを確認する」という指定をするだけで、その映像を呼び出すということも可能になった。だが「現在の姿が完成型ではない」と、同社ではさらなる改良を示唆する。

 今の形態では、データ入力の手間などを考えても個人やアマチュアのレベルで気軽に利用できるものではない。しかし、システムの熟成とデータに関する認識が高まれば、高校・社会人チームにも利用されている同社の野球分析システム「Score Maker」のように利用の裾野は広がるだろう。

 野球におけるスコアブックのように、サッカーをデータとして分析する。そうしたアプローチが普及すれば、プレーする側はもちろん、観戦する側もより多角的にサッカーを楽しめるようになる。同社の提供するサービスはそうした可能性を感じさせるものだ。

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