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初のアニメファンドで資金調達 個人向けに1口5万円から

» 2004年07月27日 20時37分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 OVA「青の6号」などで知られるアニメ製作会社GONZO(ゴンゾ)のTVアニメ次回作が、個人投資家向けにファンド化される。ゲームやアイドルのファンド化はこれまでにもあった(関連記事1関連記事2)が、アニメは国内初だ。

 ファンドは「アニメファンド! バジリスク匿名組合」。ゴンゾと、トヨタ自動車などが出資するジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)、楽天証券、ジェット証券の4社で運営する。

 投資対象はアニメ「バジリスク」(仮称)。漫画「バジリスク 甲賀忍法帖」(原作:山田風太郎、漫画:せがわまさき、講談社)をアニメ化し、来年4月から全24話(2クール)の予定だ。

「バジリスク」は、甲賀・伊賀忍者同士の戦いと、両陣営に属した愛し合う二人を描く、「江戸時代版ロミオとジュリエット」(ゴンゾの梶田浩司社長)(C)2004 山田風太郎・せがわまさき・講談社/デジタル・アニメ・プロジェクト

 出資単位は1口5万円で、総額2億4000万円(4800口)を調達する計画。販売は楽天証券とジェット証券で9月13日から約2カ月間行う。

 償還金額はDVDの国内売り上げで決まり、利回りの上限は10%。「TVアニメの収益の8−9割はDVDやビデオの売り上げ」(JDCの岩崎明彦氏)なため、DVDの売り上げだけで回収可能だと見込む。

 第1弾のDVD/ビデオ発売時期は同年7月頃の予定。放映局は未定だが、「BSかCSになる可能性が高い」(JDCの岩崎氏)。ファンドの契約期間は2006年8月までだが、同年2月の中間決算時点で利回り10%を達成した場合は、2月で契約終了となる。

 個人投資家とは別に、機関投資家も1億円弱出資するが、償還金額が投資金額の110%に達するまでは、個人が優先的に償還を受ける。110%を超えた分は、機関投資家の取り分となる。

 おおまかな元本回収ラインは、「DVDが1巻あたり1万本売れること」(JDCの岩崎氏)。シリーズ全24話を12本のDVDに収録し、1巻を7800円で販売すると仮定。DVD 1本の利益は2000円程度なため、2億4000万円÷2000÷12=1万本という計算だ。

 ゴンゾのアニメDVD販売数は、「青の6号」が1巻あたり4万5000本、TVシリーズ「PEACE MAKER 鐵」が同1万本強など、「1万本を割ることはほとんどない」(ゴンゾの梶田浩司社長)。

 さらにバジリスクはコミックで100万部売り上げているほか、原作者の故・山田風太郎には固定ファンも多い。さらに楽天グループもプロモーションに協力するなどヒットする要素は多く、「1万本は固いのではないか」(JDCの土井宏文社長)。同ファンドは「ミドルリスク・ミドルリターン」商品との位置付けだ。

スキーム図。特別目的会社として設立するデジタルアニメプロジェクトに出資する形となる

 JDCは昨年、新人グラビアアイドルを証券化した個人投資家向けファンド(関連記事参照)を発売。テレビ朝日系アニメ「かいけつゾロリ」の製作に特別目的会社方式を導入したほか、Xbox向けソフト開発支援でマイクロソフトとファンドを設立するなど、コンテンツ投資に積極的だ。

 アニメファンドでは、一定以上の投資をした人の氏名をDVDのエンドロールに表示するなどの特典を用意し、ファン心理をくすぐる工夫も施す。日本のアニメが世界的に評価される一方で、業界では慢性的な制作資金不足に悩まされているのが実情。個人向けコンテンツ投資マーケットの開拓で資金調達の多様化を促進し、新しい資金の流れを作り出したい考えだ。

左からゴンゾの梶田浩司社長、ジェット証券の釜野真宏社長、楽天証券の国重惇史社長、JDCの土井宏文社長

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