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液晶プロジェクターの常識覆す高画質――エプソンD5パネル劇場がある暮らし――Theater Style (3/3 ページ)

» 2004年08月13日 16時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 「素子レベルの応答速度の問題はなくなりました。開口率の低さはD5で20%改善し、さらにオンチップマイクロレンズを非球面にすることで光の透過率は90%にまで向上しました。さらに寿命に関しても、D4パネルで2万時間(D5パネルも同じ)を達成しています。この数字は一般的なブラウン管テレビと同等です。材料の改良でさらに長寿命になるでしょうし、5倍の10万時間を実現する新しい有機偏向材料を用いたモデルの提供も計画しています」(小池氏)

 D4までの進化に比べ、圧倒的に開発が難しかったというD5パネルだが、それが実現する世界は、従来の液晶プロジェクターの概念を覆すものだ。

千歳工場稼働で生産力強化へ

 D5パネルの量産出荷は来年3月が予定されている。最初に投入されるのは、リアプロジェクションテレビや実売16万〜18万円程度のフロントプロジェクターに採用されている0.7インチ720P解像度のパネルとなる。家庭用プロジェクター向けとしては、他に0.9インチ1080P対応パネルも製品計画があるが、小池氏によると出荷は「2005年秋には量産出荷を開始したい」というスケジュール。

 昨年末ギリギリに本格出荷が始まったD4パネル採用機が今年年末に成熟するように、D5パネル採用機の本命は来年末、フルHDの1080P対応機はその翌年夏のボーナス商戦で本格的に各社製品へと採用されるというスケジュールになるだろう。

 これだけ高画質なデバイスを今から見てしまうと、買い控えなどのマイナス面も考えられるが、小池氏は「年に1世代のアップデートを今後も継続する予定だ。来年になればD6、その翌年にはD7がアナウンスされることになる」という。加えて、プロジェクターの画質は必ずしもパネルだけの性能で決まるわけではないという製品特性もある。

 セイコーエプソンでは、今後日本でも40インチ前後で奥行き30〜40センチ程度のリアプロTVに人気が集まると予想しているようだ。リアプロTVのインチあたりのコストは、フラットパネルテレビの半分程度となる。AVラックなど設置場所にある程度の奥行きが必要になることや、コーナー置きに限ると薄型テレビのメリットがあまりないこと、消費電力がプラズマテレビや(大型の)液晶テレビよりもはるかに低いことなどが理解されれば、人気の出る可能性はある。

 もちろん、米国でのリアプロTV人気は衰える気配がない。ATSC規格のデジタルチューナーが普及し、HD放送が一般的になりスポーツ放送や人気ドラマを始めとするコンテンツが充実してきていることも、大型化が容易なリアプロTVの需要を後押ししているからだ。

 こうしたプロジェクター製品の需要拡大を見込み、エプソンは千歳空港に隣接した土地に、HTPS液晶パネルの新工場を建設中で、今年夏には一部稼働が始まる。現在の南諏訪工場の2倍の規模を誇るほか、12インチウェハー(南諏訪8インチウェハーの2.5倍の面積)を採用することで、フル稼働時にはトータル5倍の生産能力となる。

 「向こう5年間の需要をカバーできる(小池氏)」というから、歩留まりの問題さえ起きなければ、中期的には大幅なコストダウンも期待できるだろう。

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