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“空調服”の効果をサーモグラフィで検証してみたレビュー(?)(2/2 ページ)

» 2004年08月14日 19時50分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 最先端医療機器の準備ができたら、自らを実験台として、平常時の体表面温度を測る。次に空調服を10分間ほど着用してから測定。室内は28度と地球にやさしい温度設定とした。空調服の設定は「ロー」だ。

photo 平常時。体表面温度を測るため、服は脱いだ状態で検証する
photo 着用後

 脇腹から背中にかけて、明らかに温度は低下している。しかし、首や肩の部分が平常時よりも温度が上がっている点は腑に落ちない。体感としては、かなり涼しかったのだが……。あ。ボタンがとれた。

 「思うような結果になりませんねぇ」と、計測を手伝ってくれたPCUPdateのI記者がつぶやく。近づく終電の時間に、2人の脳裏に“ヤ○セ”とか不穏な言葉がよぎり始めた頃、某ダイエット情報サイトで気になる記述を見つけた。

 それは、背中に“冷却シート”を貼ると、脳が体温を調節するために脂肪を燃焼させるというもの。体が寒さを感じると、全身にあるUCP(脱共役タンパク質)が、脂肪をエネルギー源として発熱作用を起こし、体温調節を図るのだという。

 私も恒温動物のはしくれ。体温調節機能は備わっているので、一応は納得できる説明になりそうだ。

 また、同サイトによると、背中にある「冷点」と呼ばれる場所を冷やすと、脳はあたかも全身が冷やされているかのような錯覚を起こすのだという。背中全体が涼しく感じていたのに一部の表面温度が上がっていたことも、これで説明がつきそうだ。しかし、それはつまり、空調服はダイエットにも役立つということなのだろうか? 着るだけで、脂肪の燃焼効率があがってしまうのか? よくわからない。

 もう一つ、やっておかなければならない実験がある。空調服は、もともと暑い場所や工場などで働く人のために開発されたものだ。汗を気化させて熱を奪い、体を涼しくさせるのが本来の使い方。空調の効いた部屋で計測しているだけでは、ファンの空冷効果しか体験できない。

 というわけで、空調服着用、そして普通のポロシャツを着たときの2パターンで、ビルの階段を往復してきた。空調服の設定は「ハイ」。ちなみに、わが社のビルは地上5階、地下1階。軽い運動のつもりが、えらい大変な思いをした。息が整うのを待って計測。あ。またボタンが取れた。

photo 空調服を着て運動したあと
photo 通常の服を着て運動したあと

 前回と同様だ。腰から背中にかけては確かに冷えているが、肩から上は赤い。ただ、体感としては涼しく、また汗が引くまでの時間も空調服のほうが断然早かった。というか、寒いんですけど。

photo 空調服と取れてしまったボタン

 今回の検証を通じて、空調服はその異様な外観とは裏腹に、かなりの冷却性能を持っていることが分かった。なめててごめんなさい。

 アテネオリンピックが開幕した今日、東京は“40日間連続真夏日”を記録したという。夕方になっても気温は32度と、普通ならじっとりと汗をかいてくる状態。にもかかわらず、今は空調服だけで記事を書いている。設定は「ロー」で十分だ。

 検証時は、ビルのなかだったためエアコンを完全に止めることはできなかったが、やはり少し汗をかく気温のほうが、空調服は有効に働く。これで外観がもう少し目立たなければ、屋外にも繰り出してみるのだが……。

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