「iVDR」は、現時点ではPCの外部ストレージとしての市販化しかされていないリムーバブルHDD規格だが、将来的には家電製品への搭載も予定されている。
このiVDRに実装される保護技術が「iVDR Secure」だ。iVDRのHDD内部にはコンテンツと対になる形で「耐タンパ領域」と呼ばれるエリアが用意されており、その部分に暗号化キーやライセンス、ライセンス転送ログが格納される。この領域は専用コマンドでなければアクセスすることができないため、Windows PCなどにiVDRを接続してもその中身を参照することはできない。
コンテンツの暗号化/復元にはPKIが利用されており、耐タンパ領域に収められたメディア側の公開鍵と対応機器側に事前に含まれている秘密鍵とが相互認証を行い、コンテンツの暗号化および復元を行う。現時点では未定だが、ネット家電でiVDRを利用する場合にはネットワーク経由で認証局へアクセスし、そこでメディア側の公開鍵の認証を行う構想もある。
また、耐タンパ領域に含まれているライセンスを用いて、利用期間制限や再生回数、対応機器間でのコンテンツ移動(ムーブ)などを設定することができる。そうした意味では、このライセンスはCPRMにおけるCCI、VidiにおけるBroadcastFlagとほぼ同じものと捉えればよいだろう。
ライセンス自体はコンテンツと同じ記憶媒体内部に含まれている必要がないため、暗号化されたコンテンツを安価、もしくは無償で配布し、実際の閲覧・利用の際にはネットワーク経由で決済を行ってから利用するといった“超流通”のような仕組みにも対応できる。
7月に行われた「日立ITコンベンション」で同社はiVDRを利用したコンテンツ流通のデモを行っている。ここでは、iVDR対応キオスク端末を設置し、そこからダウンロードしたコンテンツをPCや家電、ポータブルプレーヤーなどで再生するというデモが行われている。
このように、iVDR SecureはメディアにiVDRを利用してのコンテンツ流通に焦点を合わせた規格であり、現時点では、私的複製について明確な規定はなされていない状態。しかし、規格自体が普及することによって、購入したコンテンツをホームサーバにセットし、複数の場所から視聴するといったケースも想定される。
iVDR自体の規格は現在Ver0.9の段階であり、すべての技術実装が完了したわけではない。「CPRMやDTCPなど、既存の保護技術への対応も可能」と日立製作所では述べるが、家電製品への搭載を目指す以上は、そうした私的複製のコントロールを行う技術の実装が必要不可欠だろう。
ここまではコンテンツの暗号化を前提にした保護技術を紹介したが、コンテンツ自体に何らかの信号を埋め込んで、暗号化されていない(アナログ出力の段階)状態でも権利保護を行おうというアプローチも存在する。
その一つが電子透かし(Digital WaterMark)。映像や音声といったデジタルコンテンツの中にある種の信号を埋め込む技術で、現在でも幾つかの電子透かし技術は規格化されており(MIDIsignやMusicSignなど)、DVD-Audioにも実装されている。
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