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“お手軽VPNルータ”の実力を探る〜バッファロー「WHR2-G54V」&「BHR-4RV」レビュー(3/3 ページ)

» 2004年08月31日 12時16分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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 カタログスペックによると、VPNによるLAN間接続時のスループットは約15Mbpsだという。FTTHの最大100Mbpsなどという売り文句に慣れていると高速な印象は持たないかもしれないが、実際のところIEEE 802.11a/gといった高速無線LANの実効スループットと大きく変わらない。よほど大きなファイルの読み書きでもしない限り、ストレスを感じることはないだろうし、動画再生やリモートデスクトップなども快適に使えるレベルだ。

 では、実際どの位のスループットが出るのだろうか。「WHR-G54V」とBフレッツ、そして「BHR-4RV」とTEPCOひかりの組合せで、LAN間接続、そしてクライアント側にWindows XPのPPTP接続を用いた場合でそれぞれスループットを計測してみた。2つのFTTHは、送受信速度が40Mbpsを切ることはほとんどない環境だ。なお、「WHR-G54V」をPPTPサーバとした。

 クライアント側はVPN経由でインターネットにも接続するように設定しておき、「Radish Network Speed Testing」でインターネットとの送受信速度を計測した。その結果、LAN間接続では公称値の約15Mbpsに近いスコアが得られた。Windows XPのPPTP接続でも受信が最大13.21Mbpsとかなり健闘したが、LAN間接続に比較するとバラつきが大きく、7Mbps程度のスコアを示すときもあった。

photo LAN間接続時。受信14.95Mbpsと、ほぼ公称値通りのスループットになった
photo クラアント側にWindows XPのPPTP接続を使用し、VPN経由で送受信速度を計測した結果

 クライアント側のPCにPPTPサーバ側のPCのファイルコピーしたところ、こちらではLAN接続が約10Mbps、Windows XPのPPTP接続で約5Mbpsと大きな差が出た。ファイルの書き込みが伴うことで、ソフトウェアによるPPTP接続のオーバーヘッドが露見した形だ。

photo LAN間接続時。ファイルコピー中のネットワークトラフィック
photo Windows XPのPPTP接続を用いた場合のネットワークトラフィック。単に遅いだけでなく、トラフィックの変動が大きい

 PPTPサーバ側のパソコンにおいた4/6/8MbpsのMPEG2ファイルをクライアント側のPCで再生したところ、LAN接続では6Mbpsまでコマ落ちなし、8Mbpsでも時折コマ落ちが発生する程度だったが、Windows XPのPPTP接続では6Mbpsでもコマ落ちが散見され、8Mbpsでは紙芝居状態になってしまった。

 やはりVPNの処理をPCから切り離せるLAN間接続のメリットは大きい。少なくとも、通信速度に関しては十分に実用的なスループットといえる。

 

 また、PPTPサーバだけを利用した場合、LAN間接続よりスループットの低下が見られるものの、それでもファイルコピー時で実測約5Mbpsは立派だろう。そもそも、クライアント側のインターネット接続環境が5Mbpsを超える速度を持っているほうが珍しいはずだ。

VPNを身近にするハイパフォーマンスルータ

 今回はVPN機能にフォーカスしての試用となったが、「WHR2-G54V」「BHR-4RV」共に有線ルータとしての性能も高い。「WHR2-G54V」の持つ無線LANアクセスポイント機能も定評のある部分であり、対応製品間であれば自動でセキュリティ設定(WEP)まで行ってくれる「AOSS」も備えるなど、ビギナーからヘビーユーザーまで幅広く使える製品といえる。

photo TEPCOひかり回線でPPPoE接続した場合のスループット。受信は軽く80Mbpsを超えた。単にブロードバンドルータとして利用しても高性能といえる

 最大の特徴であるVPN機能は、なにより導入が容易だ。それこそTCP/IPの基礎知識さえあれば、LAN間接続も簡単に導入できるだろう。PPTPサーバ機能のみを導入するにしても、LAN内のパソコンにPPTPサーバ機能を持たせるよりずっと導入は楽だ。

 個人的に「もったいない」と思ったのは、LAN経由でPCの電源操作を行う「Wake On LAN」への対応だ。通常、ルータ越しやVPN経由では「Wake On LAN」のパケットは送信できないため、是非ルータ側に何らかの機能を持たせて欲しい。VPN接続したPCからLAN内のPCの電源を入れることができれば、無駄にパソコンの電源を入れておく必要がなくなるし、VPN対応ルータを個人が導入する大きな理由付けにもなるはずだ。

 「WHR2-G54V」「BHR-4RV」は、共に競合製品よりは少々高めの価格設定だが、手軽にVPNを利用したいという人には、今のところもっともお勧めできる製品だ。対応するダイナミックドメインサービスを利用すれば、現状のLAN環境やPCをほとんど変更することなくVPN環境を構築できる。外出先で「自宅やオフィスのPCにアクセスできれば……」と思ったことのある人なら、真剣に導入を検討する価値があるだろう。

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