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ユーザーの“ものぐさ”が変える「監視カメラ」の世界(2/3 ページ)

» 2004年09月06日 09時43分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 セキュリティカメラ市場は、IPカメラの登場によって市場規模も変わってきた。最近の状況の変化を、ソニーマーケティング コンテンツクリエイション&コミュニケーションマーケティング部 岩田 範道氏に聞いた。

IPモニタリングシステムのマーケティングを担当する岩田 範道氏

 「もともとアナログベースの監視カメラ市場は、年間1千億円規模と言われておりまして、年々微増といった状況でした。IPカメラが出てきてからは、過去のアナログカメラからの置き換えという需要以外にも、一部新しい市場ができてきています。市場規模に関してはいろいろな調査結果がありますが、IPカメラだけの市場としてみると、年間だいたい30億円程度の市場規模があるのではないかと考えています」

 セキュリティ以外の新しい市場、言い換えれば新しい使い方というのは、どういうものなのだろうか。岩田氏は苦笑しながらこう語る。

 「さまざまな使い方を、お客様が独自に考えているというのが現実ですね。製品カタログなんかも私が作っているんですが、用途が広すぎる故に、何か具体的なことがなかなか書けないんですよ。だからついつい何にでも使えます的なことしか書けなくなってしまうんですけども」(岩田氏)

 「例えば半導体工場なんかでは、装置がエラーを発信したから様子を見に行かなくちゃ行けないんだけど、ああいうところではちょっと中に入るだけなのに、防塵服を着てエアシャワーを浴びてと、大変なことになるわけです。そういうときにこういったカメラがあるだけで、わざわざ中まで入って行かなくてもだいたいの状況が分かる」(同氏)

 「ネットワークカメラの第1号っていうのは、英国のケンブリッジ大学にあったんです。学生がコーヒーを飲みたくなったとき、せっかくそこへ行ってもコーヒーポットが空になってることが多いと。わざわざコーヒーの残量を見に行くのがめんどくさいんで、そこにカメラを付けてネットワークにつないじゃって、自分の席から見えるようにしたんですね。そのカメラの映像が世界中から見えるようになって、やがて世界で一番有名なネットワークカメラになったんです」(三浦氏)

 最初にこのカメラが登場したのが1993年11月、ケンブリッジ大学コンピュータ研究所でのことである。「The Trojan Room Coffee Machine」と名付けられたこのカメラの映像は、途中研究所の移転などもあったものの、2001年8月22日にそのスイッチが切られるまでのおよそ8年弱に渡り、ライブ中継を続けることになる。

 つまりIPカメラの原点は、“ちょっとしたことなんだけど、わざわざそこに人間が行かなくても状態が分かる”というものなのだ。電源とネットワークがあれば、簡単に誰でも設置できて、誰でもそのカメラの映像を見ることができる。そういう簡便さも、ライトな用途に拍車を掛けていると見ていいだろう。

 「これらの用途はある意味、一つの業務改善なんですね。『ものぐさ』というのが、実は重要なキーワードなのかもしれません」(三浦氏)

ライトな用途は無限にある

 ソニーの「SNC-P1」は、リーズナブルな価格とルックスではあるが、実際には個人で買えるようなコンシューマー製品ではなく、あくまでも業務用の製品だ。だがソニーでは、今後の展開次第でコンシューマー市場への進出も可能ではないかと考えている。

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